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私とアートの距離を縮めてくれた小説。 『楽園のカンヴァス』

皆さま、こんにちは。
前回のはじめての投稿にたくさんのいいね(いや、note界では「スキ」と言うやつですね。ふふ、何か照れる!爆)を押してくださり、ありがとうございます!!

「32歳になってもまだ自分のことわかりまてーん!ぴえん!」という情けない内容だったにも関わらず、共感してくださる方が意外と多いのかも!という嬉しい驚きと共に、この後何書いたらええのんー!?という若干のプレッシャーで更新が2週間も空いてしまいました。ごめんなさい。

さてはて、今回のトップの画像はこの夏休みにひとり旅で訪れた倉敷の大原美術館の入り口に飾ってあったポスターの写真です。
大原美術館といえば、エル・グレコの『受胎告知』やピカソの『鳥籠』など、日本にあるのが奇跡と言われるほどの名画が多く展示されていることで有名かと思います。
私が訪れた時は「異文化は共鳴するのか?」という特別展が開催中で、「他文化」「裸婦」「宗教・信仰」など様々なテーマに合わせて西洋画と日本画の対比が展開されており、アートに造詣の深くない私ですら長時間過ごすほど、非常に見応えがありました。
・・・が、今日お話ししたいのは大原美術館のことではなく(もちろん倉敷旅行自体めちゃくちゃ楽しかったので別途note書きたいと思いますが)、原田マハ先生著の小説、『楽園のカンヴァス』のことです。


代表作なので知らない人の方が少ないかな?

数年前、社会人になってほとんど本を読まなくなって久しくなった頃、職場の先輩に教えてもらって一気に読み耽った一冊。
「やっぱり小説って面白い!!」と、読書熱を再燃させてくれ、且つずっと憧れてはいたけど中々踏み出せなかったアートの世界と私の距離をグッと縮めてくれた本であります。
読了済みの方はお気づきかと思いますが、この物語の冒頭の舞台が大原美術館なのです!

そう、私いわゆる聖地巡礼をしてきたのです!!ドヤ!!!

・・・なーんてカッコいいことを言えたら良いのですが、何を隠そうワタクシ、大原美術館のギフトショップに飾られたこの本を見たその瞬間まで、その設定をすっかり忘れておりました。爆
いやぁつらい。自分の脳みそのメモリーのキャパ小さすぎんか・・・(余談ですが初めての倉敷!と意気込んで行った今回の旅行も、親からの「あんた家族で何回も行ったやん」の一言で撃沈。泣)。

嘘だろ自分、あの時この小説に抱いた感動は偽物だったのか?と胸騒ぎを覚え、帰りの旅路で急遽再読したのでした。

その結果、
『うおおおおやっぱりめちゃくちゃ面白い!!!世界観良き!!!好きぃ!!!』
と、あたかも初めて読んだかのようなときめきを感じたので、忘れないうちにここにしたためます!笑

よろしければ、お付き合いいただければ幸いです!



Nancy的『楽園のカンヴァス』読書感想文

あらすじ

とうとう、みつけたわね。

ルソーの名画に酷似した一枚の絵。そこに秘められた真実の究明に、二人の男女が挑む。興奮と感動の傑作アート・ミステリ。山本周五郎賞受賞。

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。

https://www.amazon.co.jp/楽園のカンヴァス-新潮文庫-原田-マハ/dp/4101259615

感想

この小説をきっかけに原田マハ先生の他の作品を読み始めたのですが、先生の物語に共通しているのは登場人物の心の動きの解像度の高さ。特に先生のアートをテーマにした「アート小説」にはたくさんの歴史上実在する人物が出てくるのですが、些細な出来事、相手から言われた一言にも一喜一憂したり、頭の中では仕方ないと分かっていても嫉妬を感じてしまう、というような「人間臭い」部分を描くのが本当にお上手で、登場人物ひとりひとりに共感や愛おしさを感じずにはいられません。だからこそ私のアートへの興味の扉が開いたのだと思います。大原美術館に行きたいと思ったのは潜在的にこの小説のことを考えていたからに違いない・・・!説得力皆無ですが笑。

でも正直、この作品で私が一番魅力的だと思ったのは主人公のティム・ブラウン(架空の人物)。多分描写的に見た目はそんなにイケてない(失礼)のでしょうが、アートへの情熱と向上心、それでいてライバルの織絵に切ない恋心を抱いてしまう不器用さと、彼女を守ろうとする実直さが素敵でした。

そしてやはり、この物語の重要なキーであるルソーの名画『夢』に描かれているヤドヴィカが彼のミューズとなり、「永遠を生きる」と決めたシーンも胸が震えました。
今回、自分の意思で行きたいと思って大原美術館で絵画を見たからこそ、その「永遠を生きる」という意味が分かる気がしたんです。
名画の中に住む人物たちの瞳には魂が宿っており、数百年経った今もなお私たちに語りかけてくる。生きることの喜び、悲しさ、怒り、そして希望。きっとこの先も世界中の人々の記憶の中に生き続ける。それって何て素晴らしいことなんでしょう。

そういうふうに思わせたくれたのもこの物語の大きな魅力ですし、新しい世界を見せてくれて、私の人生に彩りを与えてくれて、本当に感謝しています。

Favorite quotes (好きなフレーズ)

アートを理解する、ということは、この世界を愛する、ということ。アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ。
いくらアートが好きだからって、美術館や画集で作品だけを見ていればいいというもんじゃないだろう?ほんとうにアートが好きならば、君が生きているこの世界をみつめ、感じて、愛することが大切なんだよ。

本書(原田マハ著『楽園のカンヴァス』)P.186より

すごく素敵な言葉。著者の原田マハ先生がこの物語を通じて伝えたかったメッセージなのではないかな?とも思います。
何気ない日常も、ひとつひとつが奇跡で、その人にとってのアートになり得るのかもなぁ・・・

そんな(ちょっとポエムな)ことを考えながら、この熱が冷めないうちにまた美術館に行きたいなぁなんて思いを巡らせています。
皆様のお気に入りの美術館、ぜひ教えていただけたら幸いです!

それでは今日はこの辺で・・・
また長文になってしまった。お付き合いいただきありがとうございました。


有名な美観地区。織絵(本作品のもう一人の主人公)もこの道を歩いていたのかなぁ。


Nancy

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