「お金じゃ買えないたったひとつの大切なもの」
「お金じゃ買えない大切なもの」の存在を、いつのまにか見失ってしまった。
社会人になってからだろうか。つくばで失敗したからかな。
いや、きっともっと前から。見失ったのではなく、知らなかったのかもしれない。
1. 「お金じゃ買えないたったひとつの大切なもの」
「やまとなでしこ」というドラマが大好きだった。
お金持ちと結婚することに全てを賭ける、松嶋菜々子さん演じる桜子が、母親が病床で残した言葉「お金じゃ買えない、たったひとつの大切なもの」を探すお話。
桜子も、若葉ちゃん(矢田亜希子さん)もめちゃめちゃ可愛くて。
何度も観たのにまだ再放送を切望している、大好きなドラマのひとつだ。
高級ブランドのお洋服を着て、完璧な容姿で華やかなスチュワーデスを仕事にしながら、お金が全てという揺るぎないポリシーを持ち、どびっきりの玉の輿に乗るために全てを注ぎ込む桜子。
いつになったら気づくんだ、いつになったらわかるんだ、すぐそこにある、お金じゃ買えないたったひとつのものに。その、愛に!
とヤキモキしながらも、少しずつ本当の幸せに気づいていく桜子に、共感と憧れを抱いた。
当時、大学附属の私立高校で社長令嬢の友人に囲まれて過ごし、経済的なカルチャーショックを受ける毎日を3年間過ごした果てに、「この世はカネでできている」と思っていたわたしにとって、「お金が全てなの」と言い切る桜子が潔くて大好きだった。
なんなら「愛」ですら、場合によってはお金で買えるのでは、と思っていた。
ドラマの中の「お金じゃ買えないたったひとつの大切なもの」は「愛」という設定だったと思うけれど、人生においてはどうなんだろう。
「お金じゃ買えない大切なもの」はたったひとつ、「愛」なのか。
たったひとつじゃなくて、もしかして、たくさんあるんじゃない?
心が揺れ動くものに触れて過ごしてみて、さらに先日起きた、なんともミラクルなことを受けて、そんなことに気づきはじめた。
2. noteが起こしたミラクル
人生初のBlogを書き、noteで自分の人生を振り返り、紡いだ言葉を世の中に出してみる。そこから得た喜びと気づきから、また1歩、新しい挑戦をしてみる。たった1ヶ月半、そんな風にして過ごしてみて、わたしは新たな景色をいくつも見ることができた。
新しい挑戦のひとつは、お料理教室で好きな料理をもっと学ぶということ。
姉が教えてくれた、Voicyの香村薫さんとSHIORIさんの対談を聞いて、いつかわたしも受けてみたいと思っていたSHIORIさんのオンライン料理教室に入ることだった。
待望のお料理教室に申し込み、レッスンを視聴してみると、そこにはこれまで感じた事のないわくわくする世界が広がっていた。レッスン動画がお宝の山みたいに連なるInstagramに荒ぶる鼻息を抑えながら、新しい挑戦をしてみた感動をnoteに書いた。
すると、なんてこっった。
こんなこと、あるんか。
SHIORIさんご本人が、このnoteの記事を見つけて、読んでくださったのだ。
そして、ご自身のInstagramのストーリーズで
「とても嬉しいnoteに巡り会えた」
という、嬉しすぎるコメント付きで、このnoteの記事をシェアしてくださるという、どえらいことが起きた。
「とても嬉しいnoteに巡り会えた」
「巡り会えた」って。
もしもわたしが達筆な人間であれば、書道パフォーマンス用の大きな筆でデカデカと書いて、立派な額縁に入れて壁一面に飾ってる。
達筆どころか、わたしの字は崩れきってるから、額に入れて飾ることはせずこうしてnoteに書くことにした。
ストーリーズに流れてきたこの投稿を見た時は、華麗なる二度見、いや、三度見。
何度も何度も見返して、スクショを撮り、震える手で姉にLINEした。
「DMしてみるべし!」
姉から来るアドバイスは、時にわたしの腰を抜かす。
えっえっえーーっ!そんな勇気、でませぬ。
そもそもDMなんて、そんなことしていいのか?迷惑ちゃうかーそんなん。
姉に言わせると、気持ちを伝えるチャンスだというので、勇気を振り絞り、ない頭を絞り、3時間くらいかかってようやくSHIORIさんにDMしてみた。
そうしたらね。返信くださって。わたしのインスタアカウントに投稿したオンライン料理教室のお料理にもいいねをしてくれたのでした。
ほんとうに、感謝。
1歩、2歩、あたらしい世界に踏み出して、いま感じたこの喜びこそ「お金じゃ買えない大切なもの」だ。
3. 新たな景色に出会うこと
もしも、心がグダグダにやられたあの9月に、あのまま思考を停止してこれまでの生き方にまだ縛られていたとしたら、こんな風に新たな景色を見ることはなかった。
お金じゃ買えない大切なものが、この世にはたくさんあるんじゃなかろうかってことを感じることもできなかったかもしれない。
自分の心をほったらかしにして、ただ時間を売るようにお金を稼ぐのは、もうやめよう。
桜子のお母さんが言った「お金じゃ買えない大切なもの」っていうのが、わたしにとっては何なのか。これからじっくり探そうと思う。
4. いつもの景色だって
そんな嬉しい気持ちを抱えながら、SHIORIさんのお料理レッスン、きのこのリゾットで余った生クリームを消費することを考える。間違えて注文した、こちらも使い道が定まらないさつまいもで、夫も子どもも大好きなスイートポテトをつくることにした。
子どもたちの3時のおやつにちょうど焼き上がるように、大きなさつまいもを切って茹でていたら、娘が帰宅してキッチンをカウンター越しにのぞいてきた。
3時のおやつはスイートポテトだと察した娘は、帰宅したばかりの息子に駆け寄り、スイートポテト速報を伝えている。
速報を聞いた息子は「スイートポテト、スイートポテト」とルンルンで歌いながらリビングにやってきた。
今日はどんな形で焼こうかと娘に相談して成形し、オーブンに入れると、甘くておいしい匂いが部屋を包み込んだ。娘は待ちきれずにオーブンの前で待機。
そして、大量に出来上がった焼きたてのスイートポテトを、3人で頬張った。
ほんの2ヶ月前までは、子どもたちが帰宅してもわたしは自室に閉じこもり、リビングで白熱する兄妹喧嘩に「静かにしろ!」と、しょっちゅう大声で怒鳴っていた。それが嘘のように、こんなに穏やかな家族のおやつ時間が、嬉しいことにわが家の日常になった。
宿題せずに粘土ばっかりやっている娘に、
「粘土ばっかやってんちゃうぞコノヤロー」って今日も喝飛ばしちゃったけど。
気に留めなければ見過ごしてしまいそうになるような、こんな日常が、わたしにとってはようやく手に入れた大切なもの。これも、「お金じゃ買えない大切なもの」かもしれない。
だから、忘れないようにしたい。新しい景色に出会えた感動も、ずっと欲しかったゆるい日常も。
手に入れた瞬間に消えてしまう儚い夢にならないように、noteにこうして書き綴り、ひとつずつ自分にとっての大切なものを集めていこう。