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休業前日のこころと、やっぱり誰かのために作りたい雑炊
なんだかいつもよりも息が深く吸えている気がする。そんな秋の昼下がり。
1. 家族のための雑炊
12時を回っていることに気づいて、キッチンに立った。
ごはん、あったっけな?と炊飯器に目をやるとモニターには42時間経過の文字。
そうだ、朝ごはんに出せなくて今朝はパンにしたんだった。そのまま食べるには厳しそうなご飯が1人分ほど残っていた。
ごはんを復活させる簡単な料理を思い浮かべてみる。焼きおにぎり、チャーハン、リゾット、ドリア、雑炊。
うん。どれも自分だけのために作るのはめんどくさいな。また辛ラーメンいっちゃう?と心の中の悪魔がささやく。
とはいえ、このごはんを何とかしないといけない。ラーメンへの誘惑と葛藤していると、数日前に作った中華風スープのことが頭にうかんだ。
顆粒鶏がらスープの素を使ったいつもの中華風卵スープ。そこに目の前にあった使いかけの乾燥エビをドバッと入れたらとても良い味がでて、これ雑炊にも使えそうだな、と思っていたのだ。
家族の誰かが病気の時はうどんに頼りがち。何かほかにいい病人食はないかと考えていたところだったから、乾燥エビを使った雑炊を試作してみることにした。
家族のために試作。やる気スイッチが入った。
もう20年以上前に100均で購入した1人用の土鍋を引っ張り出し、水と茅乃舎のだしを入れて火にかける。
そしてお湯が沸くまでの間に、ネギを刻む。多少失敗したとしてもネギさえあればあればだいたいおいしくなる。だからたっぷりと。
自分だけのお昼ごはんのためにトントンとネギを刻む時間が、なんだか贅沢に思えた。
煮立ったら、固くなりかけたごはん、乾燥エビ、そしてホタテ缶を入れてみた。
缶詰を入れるならカニ缶が良かったけど。高級カニ缶はないからホタテ缶でまにあわせる。塩で味を整えて、溶き卵を流し入れネギをちらせば出来上がり。
42時間モノのごはんはもちろん、乾燥エビもホタテ缶もみごとによみがえった。
うん、おいしい。これなら病人でも食べられそう。
ただ、量が多い。多すぎ。
大盛り一膳分くらあったごはんを全部入れたら、雑炊になったとたん2人前になった。そして熱々の雑炊。ふーふーしてゆっくり食べるあいだに、米が吸水してさらに増量していく。これは病人にはきつい。食べても減らない感じ。
病人に作る時は、ごはんの量はちょっぴりでいい。
でもやっぱカニがいいな。それか焼き鮭。
2. 休業期間の前の日
お昼時にネギを刻むだけで、何か心に満ちていくものを感じるなんて、おおげさだなぁ。でもそんなオーバーなほどの心の広がりを、しんみりと、じっくりと、味わいたい気分だった。
今日、お世話になった職場に貸与PCを返却し、ご挨拶をしてきた。
明日からしばらく休業。
せっかく東京まで出たのだからと、帰りに高級食パン「セントル ザ・ベーカリー」に寄り道して、角食を1本買う。
育休中に友人と買いに来たときは1時間列に並んだのに、お客さんは誰もいなくて今日はあっさり買えた。
今までだったら当然、購入制限の3本(6斤)ギリギリまで購入していた。そして友人が鉄アレイと呼ぶ、見た目よりもはるかに重い紙袋を3つ抱えて帰宅していた。
でも、今日は違う。食べたくなったらまた買いに来られる。
だから今日は1本でいい。
それがなんだか嬉しかった。
と思ったんだけど。
「以上でよろしいですか?」の店員さんの呼びかけに、心が揺れる。
それを聞かないでくれたら、このまま帰れたのに。
棚に再び目をやると、イギリスパンと目が合ってしまった。
ずっと気になっていたけど購入制限により手を出すことができなかったイギリスパン。
「イギリスパンもひとつください」
ホクホクの心とほかほかのパン4斤と、職場の方から頂いたクッキー缶を抱え、帰宅した。さぁこのパンたちを、どうやっておいしく食べようか。
3. 3ヶ月間のお休み
お昼に試作してみた雑炊を食べて、noteに今の気持ちを書きながら明日からのことを考える。
もう、会計士、やめちまうか。
そう思ったけれど、結局そんなことは決められなかった。そう簡単じゃない。だって、迷って転職もしてウロウロしながら、それでもなんとかここまでやってきたんだ。わたしにはこれしかない。そう思ってずっとやってきた。
だから声をかけて下さる方々には休業宣言をして、ひとまず、年内はお休みすることにした。
明日から年末まで、3ヶ月。
3ヶ月もお休みですか!いいなぁ。とお仰る方もいたけど、いやいや3ヶ月なんてあっというま。
しかも10月から12月でしょ。この3ヶ月はなぜか一瞬で過ぎ去ることを40年以上生きていると、さすがのわたしでも知っている。さらに忙しさを理由に掃除片付けをしてこなかったから、大掃除は大変なことになりそう。
この家を大掃除するとしたら、3ヶ月では足りないことも知っている。
今年も、大掃除はそこそこやれば良しとしようか。
3ヶ月後、今と違う何かが見えてきているなんてことはそうそう期待できはしない。けれど、それでも何か一つでも得るものがあるといいな。
いつの間にか周りに宣言した休業期間が過ぎてしまって新年になり、心がブレブレのまま、いつものように次の仕事を受ける。
それ、いつものパターンすぎる展開。そうならないようにせねば。
4. こども達の日常
息子と娘が学校から帰宅すると、あれ?お母さんもう帰ってきたの?なんて言いながら私の周りに集まってきた。
娘は私の前に座り、早速今日頂いてきたクッキーを開ける。めざとい。
最初に食べたクッキーがおいしかったらしく、「これ、有名なお店なんだね」などと大人びたことを言っている。
「これ、開けてもらえるかな。」クッキーの袋くらい自分で開けられるくせに、嬉しさでダレた顔で2枚目のクッキーを差し出してくる。こちらもニヤニヤしながら開けてあげるとまたデレデレと嬉しそうな顔をする。
息子はマイクラをしながら、私にはよく理解できない用語を使って何やら一生懸命説明してくる。とりあえず、「ふーん、そうなんやぁ」と言ってわかったふりしてやりすごした。
そして暇そうな私にはもう飽きたのか、それぞれの日常を楽しみ始めた。
残ったのは足元でお昼寝中の愛犬だけ。
いつもこうやって過ごしてるんや。
帰宅後の子どもたちと、こうやって余裕のある気持ちで触れ合うことをしてこなかったなぁ。ちょっとだけ感傷的になったけど、今日からはそうはいかないよ、と気を立て直す。3時になったら2人とも先に宿題やりなさいよ。なんて、母親っぽいことを言っておいた。
お母さん、仕事してくれていた方がいいなぁ。なんて言われる日が来そうだ。