「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」感想文
話題の「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」を読了した。
実はとあることでとある木曜日にちょっとした絶望を感じ、金曜日はふて寝というか、1日寝て過ごし、ようやく目が覚めた土曜日、割と面倒くさい宿題を、地下のランドリーで洗濯機を回しながら2時間で仕上げ、ブルックリンにあるという「JAPAN VILLAGE」という日本食材などを扱っている大きいスーパーに、行こうかどうしようかと迷いつつ見ていたYOUTUBEで、ホリエモンがNews Picksでトークしていた覆面作家「麻布競馬場」さんの作品が、表題の「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」だった。便利な時代で、小説がアップルブックスで1400円の課金で読める。(ちなみに、アマゾンでデジ本を買うと、ほかの国で読めなくなるので要注意です)
「麻布競馬場」というのは、何かでちょっと聞いていて、「地方競馬が麻布にできたのかしらん」と、甚だアホなイメージを思い浮かべていたのだが、覆面作家さんだということを知り、しかも、「この部屋から〜」も、なぜか字面だけは知っていて、「は〜、小説だったのか!!」と全く躊躇せず読むことを決意した。1400円、ドルなら10ドル以下。安い!!笑。
簡単に言えば、主に地方出身で、東京の早慶・MARCHあたりに行って、東京に出てきた若者(30歳)の鬱屈した思いを書き連ねたオムニバス。
歴史も文化も適当にある、大阪と京都の間の中核市をウロウロしていた私には、地方出身者が抱くという「この街には何もない」的な何かしら、が、今でもさっぱりわからなくて、「そんなん卑下しすぎちゃう?」と思うのだが、大阪人は最高でも阪大やら京大に行くことで満足してる、というアザケイ(麻布競馬場の略称)の記述で、一気に信頼性が高まる。十三の公立進学校というのは、北野高校??
この一連の作品の中には、「東京カレンダー」という雑誌の話がよく出てくる。「東京カレンダー」略して「東カレ」というのは、いわゆる「港区以外は東京じゃない」的な価値観を前提にした、軽薄なdanchuみたいな雑誌のことで、ちょうど私が東京にいるころ、つまり東京ハックに目覚めていた頃、東カレ的世界にちょっと憧れたり、憧れるにはちょっと遅かったりもした雑誌。一時は月400円ほど課金もして、東カレ的男女が入り混じる小説(これもちょっと仕掛けがあり、作家はおそらく小説を書く素養はあるが売れないライターたちが引き受けていると思われ、読者のコメントの反応を見つつ、なんだかストーリーが多少変化するらしい)を読んでいたこともある。そのうち「東カレデートアプリ」的なものも出てきて、「ほほー、こういうビジネス展開もあるんか」と感心した。
私が印象に残ったのは、最後から二つ目の「東京クソ街図鑑」。東京に出てくるに際して、どこの街に住むべきかを東京ベテランに問うている若者の話。問われた方は、メディアなどでよく出てくる、目黒やら麻布十番やら清澄白河やら高円寺やら、私の住んでいた代々木上原やら、をくさし続ける。
何が嬉しいって、大阪で生まれ育ち、東京で下宿してもお金に困るだけやん?と関西の大学しか考えなかった私が、紆余曲折へて30代半ばに東京に来て、しかも、私は最初から東京版の編集者をしていたから、おそらくどんな人よりも早く、深く、東京という街の全体像と色をキャッチアップできたことが、この一つの短編で証明できたということ。
最初は中央区の勝どきに住んだから、清澄白河っぽさはなんとなく知ることができたし、東京都は東西に長く、東にあるのは全部「区」で、西にあるのが全部「市」であることは選挙区の数を見れば一目瞭然。その地価の違いも、当然編集しましたからね。また、麻布や六本木周辺は意外と外部から電車で入るには不便な街で、だからこそ、その他地域の住民からするとスノッブに感じてしまうこと、表参道・青山は、逆に小田急線で直通で来れるようになったから、案外敷居の低い街になっていること、などを知っているから、ものすごく楽しめるのだ。(ちなみに代官山は実際は結構寂れている。そして、最近電車の関係で埼玉県民が多数押し寄せているという)
アマゾンレビューに溢れる「私の東京タワー文学」
ところで、この本のアマゾンレビューには、それぞれのレビュワーが、「東京、もうすぐ30歳になります」という鋳型を使って、それぞれの「この部屋から〜」を書くという驚くべき事象が発生しています。それも、すごい数!!それぞれの思いが書きしたためられていて、「民度、高!!」と思います。こんな国、ほかにあるんだろうかー。。。
ちなみに、近年での富の象徴「タワマン」をテーマにして、東京、または大阪を舞台に、あまりに大きな街に住み、自分の存在が小さくなってしまった自分を憐れむ?ような、自虐小説のことを「タワマン文学」というのだそうです。
以前、ラジオでタワマンの広告コピー、たとえば「武蔵小杉に住まう」的なものを「マンションポエム」と称して面白がっている人の話を聞いて興味深いと思ったのですが。。
日本語というのは、もしかしたらとても心を表現しやすい言語なのかもしれないなと、アメリカにいると思います。世界一の文学大国は日本かもしれない。
今、マンハッタンに住んで、一応キャリーが住んでいた「アッパーイーストサイド」に住んでいます。厳密には私の住んでいるのは「York Vill」で、本当のガチの勝ち組が住む「アッパーイースト」は、5番街からレキシントン街ぐらいまで、その中でもジャッキー・ケネディが住んでいたようなところは、セントラルパーク沿いとパーク街沿いであることもわかった。
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