言葉なんかおぼえるんじゃなかった
あまりにも好きな詩がある。
田村隆一さんの「帰途」という詩だ。
観て、私の胸に深く刺さりすぎて、でも「好きな映画は?」と言われたときにそのタイトルを挙げるのは憚られる映画があるのだけど、その映画の印象的なシーンで朗読されていたのが、「帰途」だった。
大学で学びたいことは何か、考える瞬間もなかった。それほど、圧倒的に、文学しかあり得ないと思って文学部に進学した。私にとって小説は、言葉は、光だった。
でも、文学なんていらない人生のほうが良かったとも何度も思った。他者や他の命の痛み、叫び、それらに耳を澄ませて、私も苦しくなって、何になる?
わからない。
わからないけれど、ただ一つ言えるのは、この詩は本当に美しんだということだ。