妙なイタズラ
目が覚めてもやはり恐竜はそこにいた。
講義をサボってタバコを吹かしていたぼくだが、三本目を吸ったあたりで気づいたのは煙の奥に見(まみ)える異世界。
わかっていることだが、ぼくは21世紀生まれのしがない学生であって、タイムトラベルに合うような出会いも気概も運命すら持ち合わせていない。
ヤニと混じっておかしなものでも吸ってしまったのか。
一眠りしたものはいいものの、やはり目の前には恐竜がいる。
二足歩行を先駆けて、四足のろまの首に噛み付くみんな大好き図鑑の世界。轟音と奇声を眺めつつ、ひとまず起き上がることにした。
寝起き眼に考えるが、なんというかぼくはいま、すごい危険な状況にいるらしい。
よくわからないが、目の前には恐竜がいて、激しい生存競争を繰り広げている。まぁ、実際は肉食種による一方的な蹂躙だけど。とにかくこんなところにいては潰れるのがオチ、せっせとよくわからない植物の生い茂る林に身投げする。
どてっ、と間抜けな音がリビングに響いた。続けてバキッという嫌な音。
「あー! 壊したぁ!!」
ヘッドフォン越しに聞こえた妹の声と目の前に表示された『error』の文字を見つめて、パーツの折れたVRヘッドを取り外し、ぼくは現実に回帰した。