Day4】ss5 天秤の上の街
ぴゅう、と乾燥した風が吹く。
一面砂に覆われたこの国には特等の吟遊詩人がいる。その声は天の御使いの声といっても過言ではなく、騒々しい街でも澄み渡るように響き、静かな夜の砂漠で耳にすればはその世界そのものが幻と間違えてしまうほど美しく感じるという。
但し、一つ欠点があった。
どんなに観衆が願おうとも砂漠の歌は紡がない。常に夢物語のような歌しか現実にはない情景しか語らない。騒々しい街中でも、静かな夜でも。
≪静かに雪の結晶が降り続ける
音は全て吸い込まれ 光もすべて吸い込ま