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褒め上手な母へ

4年前の4月、母がはるばる大分県から私たちが住む大阪へ会いに来てくれた。母に会うのは息子がお腹にいたとき以来だから、7年ぶり。


3月27日、息子の卒園式が終わった日の夜に陣痛がきて、翌朝娘が生まれた。
母子ともに健康でホッとしたのもつかの間、私の身体になぞの発疹が現れる。
最初は手の甲だけだったのが、お腹、足、胸、顔……と日に日に全身へと広がっていった。
かゆくてたまらない。授乳もままならない。原因も解決策も分からない。

塗り薬も飲み薬も効かず、毎日注射を打っても一向に良くならない。医者も首を傾げる。
このまま身体の内部にまで湿疹が広がるんじゃないかと本気で怖かった。
ただでさえ産後で不安定な精神がすり減っていく。
血液検査の結果、血栓の数値が高くなっているから大きな病院を紹介しますと告げられたときは堪えきれず先生の前でボロボロ泣いてしまった。

大きな病院でやっと分かった湿疹の正体は、薬疹(つまり薬によるアレルギー)
産後に処方された飲み薬のいずれかに身体が反応したらしい。
正しい処置のおかげで症状は少しずつ良くなっていったけれど、薬が完全に抜けるまでは1ヶ月ほどかかるとのことだった。

こんな状態では息子の入学式には行けないな……せめて夫だけには行ってもらおう、そう思っていたらなんと入学式の前日に夫が倒れて入院することに。
結局、小学校の入学式という人生一度の晴れの日を私たち家族は欠席した。

そんな中、母は会いに来てくれた。
「大変なときに行って大丈夫?」
と母は心配したけれど、来ることは前から決まっていたし、仕事の調整やフェリーの手配も済んでいるだろうし、何より私も母に会いたかったから「ぜひ来て!」とお願いした。

夫は退院翌日、私は湿疹のピークをやっと越えたかなぁというところ。
部屋はごった返しているし、おもてなしらしいこと何もできないと思うけど……とLINEで伝えると、
「何にも気をつかわんでいいけんな。本当なら実家であぐらかいててもいいくらいなんやから」と言ってくれた。
ありがとう。そんなふうに言ってくれる人がいるというだけで、涙が出そうなくらい嬉しかった。


ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。
ついに母がわが家を訪ねてきた。

私を見るなり「変わっちょらんなぁ〜!」と母。
「中学生みたい」とはしゃぐ母(それはそれで)

そして、「相変わらず白目がキレイ」だと言った。
相変わらず……ってことは、前からそう思っていたってこと?初耳だよ。母以外の誰かにもそんなこと言われたことないし。
でも、私の名前の由来になっている目を褒められるのはなんとなく嬉しい。

そういう母も、相変わらずキレイだった。
照れくさくてなかなか本人には言えないんだけど、昔から思ってる。
性格だって朗らかで、なんなら私より若々しいくらい。
昔から細いんだけど、食べるの好きでよく食べるってことも知ってるからあんまり心配はしてないよ。
久しぶりに聞く大分弁も懐かしい。

はじめて会う「お母さんのお母さん」に息子もテンションMAX。
子どもたちへのお土産まで用意してくれる心遣い。
息子の質問攻めにもニコニコ答えてくれる。そのひとつひとつがじんわり嬉しい。

お昼には、せめてものおもてなしを……と朝に仕込んでおいたカレーを一緒に食べた。
我が家のカレーは(夫の希望により)特別な隠し味も何もない、市販のルーの裏に書いてある通り作ったカレー。
具もにんじん玉ねぎじゃがいもお肉と普通(お肉はその時によって豚肉だったり鶏肉だったり。ちなみにこの日は鶏肉でした)

お皿に盛ったカレーを見て、まだ食べてもいないのに「料理上手やなぁ」と母。
そして食べてからもなんだかんだベタ褒めしてくれたね。
じゃがいものほくほく感だとか、お肉の柔らかさ、さらにはごはんの炊き加減まで。
正直、カレーという料理にそんなに褒めるところがあったとは…… びっくり。

母は昔から褒め上手だ。
私が描いた絵や工作をいつも褒めてくれて、本当に愛おしそうに、大事にしてくれた。
動物が亡くなって泣いたとき、クラスで転校生が嫌がらせをされていると泣きながら母に打ち明けたとき、「やさしい子」だと頭を撫でてくれた。
大人になってからも相変わらず些細なことで褒めてくれる。
育児のことだって、ものすごく当たり前のようなことまで「がんばっちょるね」「えらいね」「すごいね」って。
その度、くすぐったくてあったかい気持ちになる。
そんな母に何度救われたかな。いつもありがとう。

私も二児の母となったけれど、毎日これでいいのかなって迷いながら子どもたちに接している。
子どもたちに私はどう見えているかな。
母からもらったたくさんのものを、私もまた誰かに繋いでいきたい。
そしていつか、直接「ありがとう」って言えたら。
また必ず会いに行くから。それまでお互い、元気でいようね。


----------キリトリ---------


水野 うたさんのこちらの企画に参加しています。


つい先日も別作品で参加したばかりで、その件についてはまだ気持ちの整理がついていないのですが、やっぱり「ありがとう」の手紙も書きたいなと思ったので2つ目です。いくつでも応募可とのことなので。

いつも私はnoteひとつ書くのに2〜4週間くらいかかってしまうので、こんなふうに勢いで2つも書けたのはめずらしいな、なんて。

トップ画は、私が子どもの頃に母の日に書いたお手紙。
こうして今でも大事に持ってくれている。母ってそういう人なんです。

お手紙っていいですね。素敵な企画に参加できてうれしいです。ありがとうございます。

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