ドラマ「三体」観ました
WOWOWで配信していた「三体」のドラマがアマプラで視聴可能だと知り、オリンピックが終わってから早速見始めました。今時点で「三体」のドラマは、WOWOWとネトフリの二種類ですが、そのうちWOWOW版の方がより原作に忠実だと聞き、いつか見てみたいなと思っていました。
ドラマは、全30話で1話がだいたい45分弱くらいです。慌てずじっくり観ようと考えましたが、結局一週間くらいで見終わりました。概ね、1日平均4話(3時間)観ていた計算になります。実際は、平日は2話くらいにしていたので、週末でその分を観ていたことになります。
観る速度が遅いか早いかは分かりませんが、見始めると次が気になってエンドレスになってしまうのをどうにか我慢して、ブレーキを掛けていました。それに先を観ることを優先すると、多少わからないこともスルーしてしまうので、逸る気持ちを抑えながら観ていました。また、年齢的に目が疲れてくると、字幕が見えづらくなって、観るのをやめざるを得ないと言うこともありました。
ドラマは、ほとんど「三体」の一巻目の内容です。少し先の事や、日本では三体シリーズの中に含まれていますが、本当はシリーズ外になる「三体0 球状閃電」の「球電(雷が丸くなったような現象)」が出てきたりはしましたが、ほぼほぼ一巻目の内容でした。
登場人物もドラマのオリジナル(葉文潔/イエ・ウェンジェの姪とか)や、原作では主要な人物のように思えたがドラマでは登場しない人(常/チャン将軍の息子とか)や、原作よりも登場場面が多かった人(大史/ダーシーの部下の徐冰冰/シュー・ビンビンや数式の計算ばかりしている魏成/ウェイ・チョン)はいましたが、だいだい、そう印象は変わらないように思いました。
今時点で本の方は、Ⅲまで読んだのですが、自分は、この1巻目の史強(シー・チアン)こと大史(ダーシー)と汪淼(ワン・ミョン)の組み合わせが一番好きなので、ドラマの内容も楽しみでした。それに、大史はその後も活躍するのですが、なぜか汪淼はこの1巻目でしかお目にかかれません。
ドラマの汪淼は、最初少し自分の中のイメージと違ったのですが、見ているうちに気にならなくなりました。また、原作では、あまり出てこなかった汪淼の家庭も描かれていました。原作と同じく医者の妻とまだ幼い子供が一人いますが、子供さんが男の子から女の子に変わっていました。原作よりも登場場面が多かった奥さんも落ち着いた雰囲気でいい感じだったし、一人娘の豆豆(ドォウドォウ)ちゃんも、可愛かったです。
大史も、原作の印象よりは小柄な感じで、最初はあれ?と思いました。でも見ているうちに、原作の強面なイメージと違い茶目っ気も有り、孫悟空的だなと思いました。それに気がついてからは、違和感無く楽しめました。
原作でもドラマでも、多くの人達が地球の未来を思って奮闘します。ただ、まず大史いなかったら、未来なかったよねと自分は思っています。その割には、功績があまり評価されていないようにも感じます。
先にも触れましたが、ドラマでは、原作ではあまり出てこなかった大史の部下、徐冰冰(シュー・ビンビン)が活躍します。とても有能で冷静な彼女が、大史と働いているうちにだんだん人間っぽくなっていって、最後には自分の感情を露わにするようにもなったのも印象的でした。
楊冬(ヤン・ドン)は、優秀な物理学者で雰囲気のある美しい人物です。全ての発端となった葉文潔の娘であり、重要な役割を持つ登場人物の一人ですが、原作ではあまり詳しく描かれていません。ただその分、ミステリアスで、印象に残りました。ドラマでは、もう少し彼女の人物像が描かれていましたが、人を引きつけるような透明感のある美しい人というイメージはそのまま保たれていて、よかったと思いました。
大史の上司である常偉思(チャン・ウェスイー)将軍は、原作でも印象深い人物ですが、ドラマでも存在感がありました。原作と違って息子さんが出てこなかったので、その分役割がすっきりとしてわかりやすかったように思います。
また、物語の核心と言える葉文潔(イエ・ウェンジェ)は、若い時も、年齢を経た今現在も、凜とした佇まいが感じられる姿が描かれていました。彼女が良いか悪いかは、一言で言い表すことは難しいと思いますが、その表面だけでは計り知れない彼女の強い意志や深い想いが、その横顔や後ろ姿に現れているように思えました。
原作では、最初に彼女の若いときから物語が始まりましたが、ドラマでは、まず今の事が描かれ、その後に葉文潔の若い時の話が挿入されていました。最初に原作が発表されたときには、彼女の若いときの話は後からだったのを、翻訳したときに冒頭に持ってきたという話を本の後書きで読んだので、ドラマの順番の方が、原作により近いのかもしれません。
それから、原作よりも丁儀(ディン・イー)の出番が、多かった気がします。確かに原作でも、丁儀は度々重要な場面に登場します。でも、原作を読んだ時には、天才的な物理学者というのは分かっていたつもりでしたが、どちらかというと楊冬の彼氏という認識でしかありませんでした。ただ、今回ドラマで彼は登場シーンが多く(ように感じた)、重要な役割を担っているのを観て(ように思った)、もしかしたら、自分は原作での彼をちゃんと抑えてなかったかもと思いました。
それに、ドラマを観ながら同時に「三体0」を読み始めたのですが(現在中断)、これにも丁儀が主要な人物として登場していて、もしかして三体シリーズで丁儀ってめっちゃ重要な人物だったのでは?と今更ながら思うようになりました。
実は、「三体0」をまだ読み終わっていないのですが、こっそり途中で後書きをチラ見するという反則技をしてしまいました。すると、そこには丁儀が、三体以外の他の作品にも出てくることが書かれているではありませんか。どうも、彼は作者の劉慈欣さんにとって、とても思い入れのあるキャラの一人のようです。それを知って、0を読み終わったら、別の作品に出てくる丁儀にも会ってみたいと思いました。飄々としている彼ですが、三体の本編0共に女運が悪いように思えます。別の話を読んだら、どこかに幸せな丁儀が存在しているかもしれないなと思いました。
それから、1379号のエピソードもちゃんとあって良かったです。三体人にはあまり興味はないのですが、この人だけは例外です。残りの人生を穏やかに過ごしてほしいです。
ドラマの映像も音楽もきれいでした。特にエンディングで流れていた曲が印象的で、ドラマを観ていないときでも、頭の中でぐるぐるしていました。
ドラマを観終わって、原作を読んでいない人でも、理解しやすいように作られているのではと思いました。ただ、自分は原作無しでドラマを見た印象を知ることが出来ないので、実のところどうなのかはわかりません。
興味はあっても、本を読む時間がないという方は、まずドラマを観てみるというのもありかもしれません。でも、ドラマを観るのにも、22時間くらいかかります。読む速度や読書に割ける時間は人それぞれなので、なんとも言えませんが、1巻目を読むだけならドラマ30話を観るのとあまり変わらないかもしれません。
ただ、ドラマにしろ原作にしろ、少しでも見始めたら、やめられなくなるようには思います。
予告編
エンディングの曲