勤怠管理の違法性を告発した内容についての解説
私が会社の勤怠管理の違法性を告発した内容について解説します。
告発した1つ目は、着替え時間を勤務時間に含まないように指導していた件についてです。
法律では、勤務中に制服の着用が義務付けられている場合は、出退勤時の着替え時間は勤務時間として取り扱われるのが原則です。(制服の着用が任意である場合や、制服を着用したまま通勤することが許可されている場合などは例外です)
しかしこの会社では着替え時間を勤務時間に含まないよう指導していた、つまり着替え時間に対して賃金を支払っていなかったことになります。
具体的には、出勤時には着替えなどの就業準備をしてからタイムカードを打刻するように、退勤時にはタイムカードを打刻してから着替えなどの帰宅準備をするように指導されていました。
特に出勤時は、コロコロによる異物の除去や連絡事項の確認なども打刻前に済ませるように指導されていたので、これらを含めると5分程度の時間を要します。
指導に従わない場合には、かなり厳しい口調で叱責されることもありました。
もう1つが、5分単位で勤務時間を切り捨てしていた件についてです。
法律では、時給制の賃金は1分単位で支払うのが原則ですが、この会社では5分単位で端数を切り捨てて賃金を計算していました。(ちなみに数年前までは15分単位でした)
例えば出勤時に8:57にタイムカードを打刻すると、自動的に9:00に打刻したものとして処理され、3分の切り捨てが発生します。
同じように、退勤時には18:00から18:04の間にタイムカードを打刻すると、いずれも18:00に打刻したものとして処理されます。
休憩時間も同様で、14:02〜15:02で休憩を打刻したとすると、14:00〜15:05と処理され、実際には60分しか休憩していないのに記録上の休憩時間は65分として賃金計算されます。
これらの勤怠管理は、賃金は全額支払わなければならないという労働基準法の定めに違反するものであると、厚生労働省や裁判所などが見解を表明しています。
厚生労働省や全国社労士協会がHP上に掲載しているアルバイト向けのガイドラインにも違法な事例として記載されているので、是非調べて読んでみてください。
YouTubeで専門家がわかりやすく解説してくれている動画も多数あります。
この会社ではこれらの違法な勤怠管理により、勤務するごとに平均で10分程度の差異が発生していたと推測されます。
時給1000円だとすれば勤務1回あたり約160円、月に10回勤務すれば約1600円、年間で約2万円の損失になります。
勤務日数や打刻のタイミング次第では更に損失が大きい可能性もあります。
(そもそも会社の指導を守っていないような場合にはほとんど損失は発生していないと見受けられますが、真面目に会社の指導に従っている従業員ほど損失が大きいと推測されます)
当然このお金は本来支払われるべきお金なので、未払い賃金として会社に請求することができます。
この会社では勤務時間の切り捨てについては2022年12月頃に1分単位の勤怠管理に改正されましたが、もちろん現状は不正を改めていたとしても過去の未払い賃金に対する支払い義務は消滅していません。
ただし、未払い賃金の請求には時効があります。
現在の時効は3年なので、3年以上前の未払い賃金の請求権は日々消滅していることになります。
未払い賃金を請求したいと思う方は、なるべく早く行動することをお勧めします。
この会社と同様、あるいは更に悪質なやり方をしている会社は世の中にありふれていますが、近年の風潮として少しずつ改善されてきているようです。
具体例として2022年には、5分単位で勤怠管理をしていたすかいらーくが、1分単位の勤怠管理に改正した上で、過去2年分の賃金を再計算して、その差額分を全従業員に支給すると発表していました。支払い総額は約16億円にのぼるそうです。
また2023年には、着替え時間を勤務時間に含めないようにルールを定めていたIKEAが、着替え時間を勤務時間に含むようにルールを改正すると発表していました。過去に遡って賃金を支払うかについては係争中のようです。
これらの事例はきっとその会社で働く誰かが声を挙げて闘った成果でしょう。
みなさんも自身の勤務先が正しく賃金を支払っているか確認してみてください。
アルバイトなどの時給制の方だけでなく、正社員として月給制で勤務されている方も残業代などが正しく支払われているか確認してみてください。もちろん残業代も1分単位が原則です。
また、みなし残業が設定されてる場合や管理職の方々には残業代を支払う必要がないという誤解が広まり、結果として適切に支払われていないケースが特に多いようです。(詳細は調べてみてください)
実際に未払い賃金を請求する場合には、周りに呼びかけて連名で未払い賃金を請求したり、もともと退職する予定があれば退職直前か退職後に請求するのが最適だと思います。
労働基準監督署に相談して是正勧告を出してもらったり、外部の労働組合に加入して働きかけてもらう方法もあります。
(上記のすかいらーくやIKEAの件については、従業員が労働組合に加入し、労働組合から是正を働きかけることよって達成されたようです)
いずれの方法を選択するにせよ、勇気と知識が求められることになるでしょう。
会社と争うことは多大なリスクが伴います。
会社との関係が拗れ、嫌がらせや冷遇を受けたりといった不利な取り扱いを受ける可能性もあります。
公益通報者保護法によってこのような報復行為は固く禁止されていますが、実際には因果関係を立証するのが難しく、正しく保護を受けられる保証はありません。
さらには同じ被害を受けているはずの周りの人間からも白い目を向けられる可能性についても覚悟する必要があります。
実際に私自身も、会社の不正を訴えることによって会社から浅はかな嫌がらせを受け、それに対してさらに強固な意思で立ち向かう過程で周囲の人間から白い目で見られ、多くの友人を失う結果となりました。
周囲の理解を得られなかったことに関しては落胆する気持ちもありますが、自身の信念に従って闘ったことに誇りを感じているので、後悔する部分は一切ありません。
また、私の行動に対して理解や感謝を示してくれた人間も一定数いるので、それだけでも充分報われた気持ちを得ています。
もちろんこのようなリスクを背負ってまで会社と闘う必要があるかどうかは、色々な事情を考慮した上で個人が慎重に判断すべきことだと思います。
実際にこの記事を読んだ方の大半が、そんな細かいことでわざわざ会社と喧嘩する意味があるのかと感じられることだと思います。
会社と闘った私自身も、会社に厳格な法令遵守を求めることが必ずしも正しいとは思いません。
何が正しいのか、どう行動すべきかは、個人の価値観で判断すれば良いと思います。
ただ、もし自身は闘わない選択をしたとしても、闘う人間の足を引っ張るようなことだけは避けて頂きたいと切に願います。
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