短歌
いつの日か本当の私の手のひらで本当の初夏の風に触れたい
玉入れの玉を数えるスナップでいらない形容詞を投げ捨てる
振るい漉し最後に残ったものだけが愛なのかなぁ 重すぎるかな?
焦げ臭い指と火の先に祈りを見た日もあった 傷は勲章
琺瑯のバターケースと花と手紙 食卓のひかり暮らしは祈り
日常に短歌が満ちていたのなら文鎮はいらぬ 風になりたい
めくるめく風がページを捲ったら世界を巡る旅をしようか
境界に触れたら音は屈折する 同じ波なら正確なのに
肩幅が広くて見ずに済んだもの その傲慢さに唾を吐きたい
ガザの死に怒りを吐いたその指で手淫をする人の浅ましさ
あいうえお かきくけこ さしすせそ…わをん 友が五十も増えた踊ろう
「エルサルバドルは空気も飯も美味い」ごかんがいい場所にいるんだね
ふりがなを振って話すよ 真っ直ぐに 「読めない」と言う君はまぶしい
約束をしなきゃ会えない人になる「飲も」の代わりに歌集をポチる
美学とか愛より日々の方がいい あなたに生まれなくてよかった
季節ごと好きな花の名を教えたが自分で買えばよかった花束
酒は怒り煙草は悲しみ脾と肺に燃やし焦がした君の残像
もう盗み見られぬ開け放した日記 西日に乾く罫線の皺
田舎では無垢な孫だったあなたを蛾にする性欲の炎
知ってるか?空って200色あんねん 都会のもんにはわからんかもな
あと何度歩けるだろうほろ酔いで途切れないでと祈る散歩道
思い出が消し炭になった頃気づく君が神様じゃなかったことに
七色の皿がレーンを泳ぐ夜 私は選べる雲丹もウナギも
受け取って貰えなかったかなしみに力のかぎりレモンを絞る
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