さや
自作短歌とエッセイ。すべてフィクション
日本やニュージーランドでのWWOOFの記録
なんだかとてもさびしい気持ちになったので、さびしさと一緒に散歩してみることにした。 スプリングコートを羽織って家を出る。商店街に続く道は黄色く染まり、サンダルの先に銀杏の葉が当たってかさかさと音を立てた。 ふと気になって、新しくできた喫茶店に入った。少し迷って浅炒りのコーヒーを注文する。ベンチに腰掛け、壁のタペストリーの紐が揺れるのをぼんやりと眺めた。 空調を受けて紐が振り子のようにゆらゆらと揺れていた。 注文したコーヒーが届く。カップを両手で包むと、豆の香りが鼻
私はごく普通の家庭で育ったと思っていた。 両親は4歳の時に離婚したけど、母にはとても愛されていたから寂しいなんて思ったことはなかったし、貧乏だったけど料理上手な祖母が毎日たっぷりと美味しいご飯を作ってくれて、なにも苦労することなくすくすくと育った。 実際にお金に苦労したことはほとんどなかったけど、母は「お金が無い」が口癖だった。 母は都会と旅行と歌うことが好きだったが、「今はあなたのためにお金を使いたいから」と多くを犠牲にして働いてくれた。 母親が趣味や余暇を楽しんでいる姿
2週間ぶりの東京はびっくりするくらい蒸し暑くて、早くも夏バテの気配を感じています。 みんなは元気ですか? 私は家のクーラーの効きが弱すぎて、冷房を求めてさまよい歩く日々を送っています🫠 ┈ 夏、東京の暑さに嫌気がさした私は、涼しい風と広い空、そしてずっと好きだったハーブの知識を求めて、北海道のハーブ農園にボランティアに行くことにした。 WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)という、「住む場所と食事・知識と経験」と
『近況報告でご飯いこー!!』 ︎︎大学時代働いていた会社の先輩に、一年ぶりにご飯に誘われた。 ︎︎仕事終わり19時に、高田馬場駅前で落ち合い、先輩おすすめの居酒屋に向かう。 「最後に会った時から1年半ぶりとかですよね?」 「そうだっけ?SNSでよく見てたからそんなに久しぶりって感じしないな」 「○○さんはあんまり更新しないから近況全然わかんなかったです。最近はどうですか?」 「仕事辞めて地元帰ろうかと思ってるんだよね。ちょっと都会に疲れちゃってさ、」 ︎︎先輩は裸
幸福が地獄の彩度を上げる夏もう生きるのは無理かもしれない 病名も地獄もハッピーエンドへと消費されないために詩を詠む 泣きながら眠る身体を干す場所も見つけられずに生臭くなる梅雨 もう人間キャンセル界隈 6月はかわいい芋虫として生きます 抱擁もショートケーキも自傷になる寄り添ってくれるのは歌だけ ぬくもりを夜ごと辿った鍾乳洞 雨が止むまで灯し続ける
21歳の誕生日にどうしても花束が欲しくて、お花屋さんの前を通る度に恋人にねだった。百合とかすみ草が好き。デルフィニウムは青が好き。包装紙はこっちよりこっちの方が可愛いと思う。 恋人とは大学2年生から卒業まで、約3年間付き合った。お互い家が大学の近くだったから、半同棲状態で毎日のように一緒にいた。 付き合ってすぐにコロナ禍になったのもあり、家で過ごすことが多かった。春は手を繋いで家の前の桜並木を散歩して、夏は近所の公園で花火をし、秋はハロウィンパーティーをして、クリスマ
いつの日か本当の私の手のひらで本当の初夏の風に触れたい 玉入れの玉を数えるスナップでいらない形容詞を投げ捨てる 振るい漉し最後に残ったものだけが愛なのかなぁ 重すぎるかな? 焦げ臭い指と火の先に祈りを見た日もあった 傷は勲章 琺瑯のバターケースと花と手紙 食卓のひかり暮らしは祈り 日常に短歌が満ちていたのなら文鎮はいらぬ 風になりたい めくるめく風がページを捲ったら世界を巡る旅をしようか 境界に触れたら音は屈折する 同じ波なら正確なのに 肩幅が広くて見ずに済ん
「さやちゃんは、生きてるうちにどうしても叶えたいことってある?」 晴れた日の午後、お客さんの途絶えたお店で、先輩に聞かれた。 私はすこし考えて、 「空の晴れた日に、ふかふかの原っぱを裸足で歩きたいです」 と答えた。 「すごくさやちゃんらしいね。 でもそれって、夢っていうか、明日にでも実現できそうな気がするんだけど」 「すごく簡単なことに聞こえるかもしれないせど、私にとってはとても難しいことなんです。 せっかくだから写真取ってSNSにあげなきゃとか、明日も仕事だな、と
7月1日から約3週間、WWOOFという農業ボランティア制度を利用して、ニュージーランドの山奥のリトリート施設で暮らしていました。 航空券を予約した時の貯金は5万円。 一人旅も海外経験もなし、お金もない、英語も中学生レベル。 本当にやっていけるのかという不安と、根拠の無い自信だけを持って飛び込んだ海外だったけど、優しい人たちとたくさんの幸運のおかげで、とっても楽しい時間を過ごすことができました! ニュージーランドで過ごした日々の記録、よかったら読んでみてください! 7
前回の記事:推しの裁判オフ会のため、レンタル女子大生とヒッチハイクをした話➀ いざ裁判へ京都でヒッチハイクを終え、レンタルした彼女と解散し、翌日。 念願の裁判オフ会に参加すべく、大阪へと向かった。 中の島公園の高架下でピクニックをしているとのことだったので、自分たちの分の昼食を買ってドキドキしながら向かう。 高架下に行くと……スピーカーで音楽を流しながら、ブルーシートの上でピクニックをしている人たちが見える。 下は20代から上は初老の人まで、国籍問わず20人程度の男女が
今年の3月に大学を卒業し、4月から住み込みバイトを始めるはずだったが、色々な手違いが重なりしばらくの間住所不定無職になってしまった。 せっかくできた空白の時間を充実させるべく、ヒッチハイクで推しに会いに行ってきたので体験を記録したい。 アヤワスカ茶会裁判2020年3月3日、青井硝子(あおいがらす)を名乗る男性が麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で逮捕された。 自作した幻覚剤入りのお茶をハーブティーと称して販売していた彼は、お茶には鬱の治療効果があり、自身の行為は苦しむ人々
代官山debrisで開催された『goodfellas TOKYO #12』があまりにもあまりにもあまりにも良かったので、興奮が冷めないうちに感想を記録しておきたい。 ※音楽にまったく詳しくないので所々間違ってるところはあると思うけど、気づいたら優しく指摘してください。 隠し扉の先にあるミュージックバー『Débris 代官山』 本棚に見せかけた隠し扉を開けると、8畳ほどの空間が広がる。 普段は『P.B Restaurant』という中華粥と薬膳カクテルを楽しめる隠れ家バーで