最初の夜から最後の夜まで
『心休め』と題して旅に出たはずが、
最後の日まで、就寝したのは朝日が見える時刻になりそう。
ボクは、ここへ観光に来たんだ。
言われたんだ、精神科の先生に。
「脳疲労を起こしているよ、熟眠障害を治す努力を自分でもしないとね」って。
分かってるよ。
どうしようもなく、辛いよ。
どんな事に関しても、上には上がいる。
けど、誰かと比べる必要なんてない。
原因が分かっている限り、
生活のリズムを変える努力をすれば、
きっと治るから。
ボクの、
『リラックス』『安心』『寝た感覚』…。
返して欲しかった。
寝ているはずなのに、全然寝た気がしない。
イライラしていて、いつの間にか寝ていて。
起きた時に、なぜか寝る前と同じ感覚で。
イライラしているんだ。
人間の身体って不思議で。
寝ている感覚が無いなんて、昼寝しても、
夜布団に入れば15分以内に眠れるボク。
無関係だと思っていた。
自律神経はコントロール出来ないから。
朝は戦う神経が優位になる。
夜は休む神経が優位になる。
きっと、ほとんどの人がそうして日々過ごしているのだろう。
ボクは戦う神経だけが、
寝ている時もずっと優位になっているらしい。
だから…静かな場所に行きたくて。
一人になりたくて。
人混みから離れた。
少しばかしの貯金を持って、
行きたい観光地や食べたいもの。
沢山、調べたのに。
結局、場所が変わっただけだった。
根拠は無いけれど、なんとなく予想はしていた。
無理矢理寝ようとしても、眠れないから。
眠たくて、
「これ以上は起きていられない!」なんて。
耐えて、耐えて、どうしようもなくなったら寝ようって。
無理だった。
観光地へ行ったよ。
素敵だった。心へ水をあげていると思えた。
食べたい物も食べたよ。
レトロな喫茶店で。
写真も撮ったんだ。
でも、旅の最終日である今日。
違う街で自分が生きた時間から、
『何か物語が生まれそう』って思ってたまらなかった。
振り返って写真を見て、豆からひいたコーヒーの味を思い出して……。
ある事も一緒に思い出したんだ。
コーヒーの木の花言葉は、
『一緒に休みましょう』なんだって。
気付けばまた、こんな時間。
このまま眠れるのか。
起きているのか…。
ボクの身体はどう反応するか分からない。
でも、ずっと来てみたかったこの場所に居ることが『リラックス』なんだ。
今、眠れないまま布団にいる。
もう何時間経つのかな。
なぜか分からないけど、
眠れないという事実に対して、
素直に泣ける。
心がほぐれる。
この街の人は皆、優しくて笑うのが上手だ。
ボクも、ほっぺが上がってばかりだった。
そして、
『文章を書きたい』
この気持ちを忘れることは、
予想通り無かった。
旅の最終日。
眠りから目覚めた時に分かるのだろう。
久しぶりに流した涙は、
眠りに来たのではない。
心を守りに来たのだと。