消えた隣人一家

隣人一家が忽然と姿を消してから、彼の心は常にざわついていた。日常は何事もなかったかのように過ぎていくが、どうしても隣の洗濯物が干しっぱなしで、誰も帰ってこないことが気になって仕方がなかった。

一週間が経ち、彼はついにSNSに書き込んだ。

「隣人一家が突然消えた。洗濯物もそのまま。何かあったのか…？」
投稿はすぐに広まり、コメントが殺到した。「警察に連絡した方がいい」「もしかして事件かも？」というアドバイスが寄せられたが、中には驚くような情報もあった。

「俺も似たようなことがあった。家族が急に消えて、痕跡が一切なかったんだ。」
「都市部でよく聞く話だよね。うちの近所でも一家全員が夜中にいなくなったんだ。」
「同じアパートで同じことがあった。1ヶ月前だったかな。」

彼はこれらのコメントに目を見張った。どうやら自分だけの出来事ではない。複数の都市部で家族が消えているという不気味な共通点が浮かび上がってきた。

次の日、彼はさらに深く掘り下げた。似たようなケースを報告していたフォロワーたちに直接メッセージを送り、話を聞いてみた。すると驚くべきことに、これらの失踪事件にはいくつかの共通点があった。

「失踪直前に隣人が不自然に姿を消した。家族の洗濯物や食事の跡は残っていた。」
「警察も捜査に入ったけど、特に証拠は見つからなかった。」
「どの家族もSNSに何か書き込んでいた直後に消えたんだ。」

ここで彼はあるヒントに気づいた。失踪した家族の全てが、失踪の直前に何らかの「SNS投稿」をしていたのだ。何気ない投稿がきっかけで、彼らは突然消えたのではないか？

彼はこの考えをフォロワーに共有し、さらに情報を集め始めた。フォロワーの中に、都市部で起きた過去の失踪事件について調べていた者が現れ、一つの共通する疑念が浮かび上がった。

「もしかして…これ、組織的なものじゃないか？」

「失踪は意図的に仕組まれている」という仮説が急速に広まった。だが、一体誰が、なぜ家族を消すのか。そして、そのターゲットになった人々が投稿したSNSの内容とは？

彼らは更に深堀りを続けると、驚くべき事実が明らかになった。失踪した家族の中には、SNSで「特定のキーワード」を使った投稿をしていた共通点があった。しかも、そのキーワードはどれも他愛ない日常のフレーズだった。

例えば、「新しい場所でリセットしたい」「人生の再スタートを考えている」といったポジティブな意味合いを含む投稿が目立っていた。

フォロワーの一人が見つけたデータベースには、さらに驚愕の事実が記録されていた。消えた家族がSNSに投稿した後、そのアカウントには共通して「知らないフォロワー」がついていたのだ。そのフォロワーのアカウントは全て偽名で、正体不明。これを見た彼の脳裏には恐ろしい考えがよぎる。

「もしや、この知らないフォロワーたちは失踪を仕掛けた者たちなのか…？」
 

そう思った瞬間、彼の手は震え始めた。過去に自分も「リセット」「新しい人生」など心情を吐露する投稿をしたことがあった。それを思い出すと、背筋が凍りついた。そして、彼は恐ろしいことに気づいた。

「知らないフォロワー」が一人増えている…。

まるで、自分が次のターゲットになるのを待っているかのように。
彼は画面を見つめながら、押し寄せる恐怖に包まれた。今までの自分の投稿が、これまで気づかなかった何か大きな力に観察されていたのだろうか。次に消えるのは、もしかして自分なのか？

その疑念が脳裏をよぎり、冷たい汗が流れた――。
 

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