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書くことは、思い出からの卒業。

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春、目の前の誠実にぶら下がって

きみの大丈夫が一番だ、と彼は言った。一番だったと思う。でもそろそろ、効力は切れてしまったでしょう。彼が残した、無理しなくてもいいよなんて言葉の効力も、もうとっくに切れてしまっている。 その一番が、きっとわたしの存在価値だったのだ。必死で自分のものにしようとしたスキルで構成されたものが存在価値ではない、と気付いていたからこそ。 唯一無二として分かりやすいものだっただけだ。それをわたしは愛と信じていた。本物だったかもしれないし、錯覚だったかもしれない。でももう、魔法は切れてし

しおりが飛んだ日。forelsket weekend

現実と空想と思い出の狭間を、時間軸をなくして短編のようなものを書きました。書きながら流していた曲はこちら、よければBGMに。 大阪発の電車に揺られて、気になる短編集を読みながら向かう日曜日の昼は、どこか頼りない。心ばかりが秋へ向かい、日焼け止めを塗るのも忘れてしまったので窓際からそっと離れる。宝塚を過ぎたあたりから、遮光カーテンをそっと開けて挨拶をした。あんなにあり得ないと思っていた建物の低さも、緑も空も。いつの間にか心の支えだった。携帯がなったのでラインを開くと、昔の隣人

サラバ青春、いつまでも儚くそこにいて

もう誰かから勧められた音楽を、毎日のように聞く日々は来ないかも知れない。 好きなひとのために8センチのピンヒールを履いて背伸びした日々は、もう繰り返されない。 いつまでも終わらない過去との戦いに終止符を打ってくれたのは、間違いなく彼女たちだ。 「過去に勝てない」ということを受け入れられないことほど、苦しいものはない。 だから、過去と今、未来は別のものだと。感情をそのまま冷凍保存して比べることなんて不可能なことなんだからと教えてくれたのは、絶対に彼女たちなのだ。 突然だ

君は何かが足りてない。だから僕は好きなんだ

「アイスコーヒー、ふたつ」 いつものコーヒースタンドでテイクアウトをする。期間限定デザインの紙袋に入ったそれは季節感などを演出してしまうから、浮かれてしまうけれど、切なくなる。 だってわたしは今から、お別れをしに行くのだから。 ────── 駅から徒歩五分、階段をのぼって振り返り見える景色を、わたしはいつもひとりで見た。彼に会いに行くために通る道のはずなのに、その景色を分かち合うことは今まで一度だってなかったし、これからもきっと、ない。 階段の先、不安定な細い道を行く

雨の日の五・七・五。夢中になれるものなんて、きっと

雨の日はすこし苦手だ。それでも、すこし高いところに行くと落ち着く。だから重い腰を上げてすべらないように、階段と坂をのぼって、すこしずつ上へ行く。重い空の下、それでも全力でわらった日々がある。 「プリキュアです!」 将来の夢は、と聞かれたホームルーム。小学校6年生で同じクラスだった友人は元気よく答えて、たちまち人気者となった。 別の友人は、いつも部活のジャージを着ていて、小柄で髪の毛をツンツンさせていた。いつもヘラヘラとわらい、運動神経抜群の彼のまわりにはいつも賑やかだった

大事なものほど手離して、変わった先で待ち合わせ。

いいことがあると、きまって何か不吉な予感がしていた。だから、いいことが起これば起こるほど私はいつも準備を始めてしまっていた。───きっと、何かが起こってしまうから、この幸せにちゃんと溺れて、得体の知れない不吉な何かも乗り越えるエネルギーをつけておこう─── 逆も然り、悪いことが続いても “これだけ悪いことが続くなんて、このあとにどんな幸せが待っているんだろう” なんていう誰も責めない、しずかに受け入れていく運命。 だから私はいつだって多くを望んでこなかった。期待はしすぎな