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宛名のない手紙

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#短編小説

フィクションの境目

「今」が一番な理由なんて明確だ。経験と知識がいちばんあって、だからこそまだ知らないことが世の中にたくさんあること、それを知れる可能性があることを人生でいちばんわかっている瞬間だから。 好奇心への執着が導いた、輪が少しずつ大きくなりつつある世界は悪くない。 もしかして壁の上にもなにかあったの? でも、そもそも見下ろすことを平気でしてしまえるようになりたくないからと。賢さによる損があるなんて、誰も教えてくれなかったし。それ以上やさしくなろうとしないで、壊れちゃうからと引き止め

すれ違い続ける、という永遠について

精神年齢が高すぎると言われた少年たちは、もういない。自由でいいねと雑な優しさで喩えられたふたりも、知らず知らずのうちにどこかの歯車になっていた。 大して変わっていない気がしている見た目も、わりと変わっていた。あの頃、校則すれすれのスカート、黒タイツにレース、ローファーを履いたわたしたちは無敵だった。 永遠なんてない、と笑いながら物語に魅せられ続けているわたしたちは、多分ずっと永遠を探している。ただ、永遠という言葉にはどこか「ずっといっしょ」とか「となりであるく」とか、そ

罪深い過去

はやく気づけばよかったと思う。ただそんなものは、あの頃に戻っても気づかない。気づかなかったことこそが事実として残り続ける。そこにあるのは繰り返される現実、不可逆性だけだ。 複製されてしまった過去ほど罪深い。一度しか体験できないはずの過去が濃縮されて、思い出す確率が高まってしまうから。でもだからこそ、わたしはいつまでもフィルムカメラを手にしているのかもしれない。 境界線があればまだよかった、と思う。というか、境界線があるということは恵まれていることかもしれない。その先は永遠

きみの夜の端っこ

あれはよかった、と思った瞬間になくしたことを自覚するのかもしれない。身体と感情が交差する瞬間に、冬が合図を出している。 選ぶとか選ばないとか。全部選んだ結果、なんて認識も聞き飽きて。ただ、それは過去という事実、現在という真実、未来と言う真理への連続だから。 そう、正しさなんてどうでもよかった。正義なんてものは人の数だけ存在できるものだから。ただ、やさしい正義が守られないのが嫌なのだ。だからわたしはそれを守りたくて、今ここにいる。わたしは守ると言い切ること、そんな曖昧な責任