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深夜を駆け抜けていくのは、彼のラーメンをすする音だった。ズズズという不規則なリズムを頬張る姿を、ぼうっと眺めていた。 「麺、のびちゃうよ」 うん、分かってる。そもそもどうして今日わたしたちは、こんなところにいるんだろう。こんなはずじゃなかった、昔のわたしがこんな姿を見たら呆れるに違いない。 誕生日は素敵なレストランで、かっこいいお祝いをしたり、花束をプレゼントしあったり。そういう「特別」を夢見ていた、はずだった。 今日は彼の誕生日。なのに、なぜかいつものラーメン屋にい