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連載小説「オボステルラ」 【第二章】33話「襲来」(5)


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第二章の登場人物



 「……ふん、こんな子ども一人見放せないほどの軽い覚悟で、あれを持ち出すとは。さあ、卵はどこだ」

 デイジー指名男は、まだゴナンの首から剣を離さない。ロベリアはため息をつきながら、店の入口の方に向かい、客から預かった武器を置いておく棚の中に手を伸ばした。下の板が外れて、中から袋を取り出す。高さ50cmほどの大きな楕円形のものが入っているようだ。

「……そんなところに隠し場所を…? 気付かなかったわ……」
「申し訳ない、ナイフちゃん。勝手に作らせてもらっていたよ」

ナイフにそう詫びて、ロベリアは袋をリーダー格の男に渡した。男は受け取り、ロベリアの胸のあたりを蹴り倒す。

「ぐっ……」
「さっさと出せば、この店をこんなに荒らすこともなかったんだ。トムス、お前のせいだ」

そう言って、男はゴナンを離すようにアゴで指示した。リカルドがすぐに駆け寄り、布でゴナンの首の傷を抑える。

「…ゴナン! 大丈夫か?」
「うん……。そんなに深くは切られてないから」

そう言いながらも、ゴナンはまだ身体を震わせていた。少しふらついてリカルドにもたれかかる。熱も上がっているようだ。リカルドはそのまま、ゴナンを近くのソファに座らせた。

入口の方では、男達がロベリアを店から引っ張り出そうとしている。
「お前は帝国に帰るんだ。裁かれなければならない。さあ、来い」

「待って!」
ナイフが、ロベリアをかばうように立った。
「お望みのものが手に入ったのなら、もう用はないのでしょう。ロベリアちゃんはうちの大切なスタッフよ。連れて行くのは許さないわ」
「この男は軍のものを盗み出したんだぞ。相応の報いを受けなければならない」
そう言われても、ナイフは一歩も引かない。

「力尽くで連れていこうとするのならどうぞ。あなた達全員を伏してこの店から追い出すのなんて、私一人でも簡単なのだけど」

 そう言って構えるナイフ。先ほどの戦闘を見ている男達は、そのナイフのセリフがただの脅し文句ではないことを感じている。

と、ミリアが良く通る声で男達に声をかける。

「これ以上の狼藉を行うのなら、この街に駐屯している王国の軍にも動くよう指示をせねばなりません。もしこのまま去るのなら、ただの旅人同士のもめ事で終わらせますが、いかがしますか、おじさま方?」




その迫力に、すぐそばでギョッとするヒマワリ。男達もミリアが何者か分かってはいないが、あまりにも威厳あるその物言いに押されている。男達は小声で話し合った。

「……我々も軍属であることを明かすつもりはなかった。国同士のいさかいに発展させるのは不本意だ。このまま去ろう」

「巨大鳥の呪いのせいで軍の駐屯地周辺に災害が起こり、我々も大変なのだ。その気味の悪い男ばかりに構ってはいられないんだよ」

(……!?)

 ミリアが乗った巨大鳥が帝国領内を飛び回った際のことだろうか? リカルドは詳細を聞きたかったが、せっかく去ろうとしている男達をまた引き留めることになる。一旦、控えた。

男達はナイフに伏されていた男を回収して、去って行く。店の外では、騒ぎを聞きつけ集まった野次馬達が遠巻きに店の様子を見守っていたが、男達は彼らを威嚇し追い払いながら店を離れていった。

「ナイフちゃん、大丈夫?軍か警察を呼んでこようか?」

野次馬の一人が心配して声をかけて来たが、ナイフは笑顔で手を振った。

「大丈夫よ。大事おおごとに見えるけど、たいしたことないから。ご心配ありがとう」

ナイフのその言葉に、野次馬達は安心して解散していく。ふう、と大きく息をつくナイフ。ひとまず、危機は去ったようだ。

「いったい、何だったの……? 卵なんかで、こんな騒動…」
「卵“なんか”、では、ないのかもね……」
リカルドの表情からは、微笑みが消えていた。

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