連載小説「オボステルラ」 【第二章】46話「仲間達に」(6)
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ゴナンの熱が完全に下がるまで、その日から2日かかった。
そして3日目の朝。ゴナンは1人で1階に降りてきた。例によってナイフがカウンター奥で自身の朝食を作っている。
「あら、おはよう。ゴナン、もう体調は大丈夫なの?」
「ナイフちゃん…」
泣きそうな顔のゴナン。
「え? 何?」
「リカルドが、リカルドが…」
そのデジャブな光景にただならぬ様子を感じて、ナイフは慌てて階段を上った。ベッドでは、今度はリカルドが苦しそうにうなされながら寝込んでいる。
「…リカルドが全然、起きなくって。なんか、痛そうで、苦しそうなんだよ。顔色も真っ青で。熱はないんだけど、どこが痛いか聞いても答えないし…。俺の病気が、移ったのかな…」
「……」
「リカルド、自分は体が丈夫だから平気だって、いつも言ってるのに…」
ナイフはリカルドの様子をじっと見た。
「…ああ、これは、いつものね。心配ないわよ」
「え?」
こんなに苦しそうなのに?とゴナンは、妙に落ち着いて様子を見ているナイフに目で訴える。
「ゴナン…。あなた、リカルドからは、何も聞いていないのよね?」
「……? 何を?」
ナイフは、少し困ったような笑顔をゴナンに向けた。
「……まあ、これはリカルドの持病のようなものだから。大丈夫、早ければすぐ落ち着くわ。長いときは何日間もこのままの場合もあるけど…」
「薬は? 痛み止めとか……!」
「これにはね、薬は意味がないの。気休めにすらならないのよ」
「……?」
眉をひそめて首を傾げ、不思議そうにナイフを見るゴナン。ナイフは申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
「ゴメンナサイね、私からはこれ以上は言えないわ。ひとまず、治まるまでそばに居てあげて。それだけでも全然、違うと思うから」
「……うん……」
「心配しないで、これは絶対に良くなるものだから。ほっといたって、大丈夫なくらいよ」
「……?」
ゴナンの肩をポンと叩いて、ナイフは階下に降りていった。ナイフはそういうものの、リカルドはかなり苦しそうだ。
「リカルド……」
「……う、うう……」
ゴナンの呼びかけにも答えられず、うめき声を上げるだけだ。ひとまず、タオルでリカルドの脂汗を拭く。それ以外に、ゴナンにできることはなかった。
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そして、数時間後。
午後になった頃に、リカルドがふっと目を開けた。
「あ、リカルド」
泣きそうな顔でリカルドを見つめるゴナン。リカルドはすぐに体を起こし、自分の状況を確認して、ゴナンに微笑みかけた。
「ああ、『出ちゃった』か…。ごめんね、心配をかけたね」
「リカルド、すごく苦しそうだった…。大丈夫? 持病って? 俺、聞いてないよ」
「持病? ……ああ、ナイフちゃんがそう言ったんだね」
リカルドはぐーっと背伸びをする。先ほどの苦しそうな様子は、もう微塵も残っていない。
「もう、全然大丈夫なんだ。たまにね、ちょっと出るんだよ」
「『出る』……?」
「ナイフちゃんも言ってたと思うけど、必ずよくなるから、気にしないで。ただ、このせいでちょっと動けない時間ができちゃうことがあるから……」
「気にしないでって。あんなに、苦しそうだったのに」
「ああ、お腹が空いたな…。ナイフちゃん、何か作ってくれないかな…」
そう言ってリカルドはひょい、と体を起こし、いつもの黒衣に着替える。体も軽そうだ。それ以上、自身の症状については何も説明しない。そのまま階下に降りてナイフに昼食を所望したら、「私はあなたの母親じゃない!」とナイフに叱られているのが聞こえる。
「……?」
何も分からないが、とりあえずいつも通りのリカルドだ。
(そういえば、この街に来るまでも、動けなくなった時期があったって言ってた。このことだったのかな…)
まだ、この世の中には、ゴナンに分からないことが多すぎる。ゴナンはリカルドの言葉を信じることしかできないのだ。そう、心の中で割り切って、自分も階下に降りていった。
↓次の話
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