勝手に1日1推し 153日目 「トリとロキタ」
「トリとロキタ」監督:ダルデンヌ兄弟 映画
お久しぶりです、あぁ、お久しぶりです。忙しくて忙しくて忙しかったです。新年度です!!
さて、そんな中でも絶対に見逃さなかったゼット!な、ダルデンヌ兄弟の新作!!「ダルデンヌ兄弟」と書いて「容赦なし」と読む。そんな新作。ほんと、容赦がなさ過ぎて困ります。年を重ねるごとに、益々引き算な描き方で、容赦のなさが際立ってる気がしました。
年齢を重ねるごとに増す切れ味、まるでいぶし銀の刃の如し(?)。
でも、好き。好きなんだよね。辛くなるの、分かってる。分かってるけど、見ちゃうの、絶対に。社会に対してまだ諦めてない姿勢が眩しく感じられるんだよなあ・・・。私、何でもすぐへこたれるし、言い訳して直視せず、諦めちゃうからさ・・・。
ドキュメンタリーさながらで、寄り添いや共感が介在することが全くない!いくらドキュメンタリー出身だからって、ここまで?!ってなるほどトリとロキタの生活を執拗に追います。残酷で無情な2人の日々を決して目を逸らさすことなく執拗に追い続けます。とにかく、感情を一切排除し追い続けるんです。イイもワルイもなく、あるがままをずぅぅぅーっと。
そんな中、唯一2人を、そして私たちを癒してくれるのが歌。2人が歌う歌です(故にトップ画像にそのシーンを選びました!)。
言わずもがなですが、ダルデンヌ兄弟の作品は生活音以外の音がないので、劇伴が流れることはありません。2人の歌う歌だけが、本作で唯一暖かさや優しさを感じさせます。笑顔だし。音を楽しむ=音楽。本質~。
本来癒されるはずの、森の中の小鳥の爽やかな囀りさえ、聞こえている場面は凄惨な現場だったりするんですもん、そういうとこ、そういうとこがやけにリアルで震えるんだよなあ。
過剰な演出がない分、上映時間が短いのも一貫してるんだけれど、短くなきゃ、召されちゃうから、我々が。心臓がやばいんですよ、どんなサスペンスやスリラーよりも心が休まりません。現実の方が遥かに不条理だって話です。次に何が起きるのか本当に予想が出来ないし、何があってもおかしくないんだもん。トリが自転車に乗ってるだけで、心配で胸が締め付けられるし、ロキタが食事をしてるだけで心配で動機がおかしくなります。
どこまでも階層社会なのが、本当に本当に理不尽で悲しくて悔しいです。
大きく広いはずの世界が分断され続け、米粒サイズになってもなお分断され続ける。その末端のミクロな世界から抜け出せないトリとロキタの短い人生、辛過ぎるよ。ビザのない不法移民の女の子、ロキタが見てられない、本気で。とことん搾取されてて、なんでよ!なんでよ!!なんでこんな目に合わなくちゃならないの?!怒怒怒怒怒!!!偽りといえど、弟のトリを守ることで自分を保っていたんだよなあ。
せめてトリの歩む道が希望に照らされますように、平等で公平な世の中が
訪れますように、と願わずにはいられないエンディング。それも無音のエンドロールが拍車をかけてくるから、より深くクるものがあるんだよなあ。私たちがこれからどう生きるかが試されます。
毎度ながら、社会を、そして、人間を信用しているからこその作品だと解釈しております!
ベルギーってチョコレートとかワッフルとか、甘いイメージがあるけれど、そんなことないね。辛いね、苦いね。虚像と実像、きっついなあ(涙)。
で、余談ですが、最近、オリヴィエ・グルメが出演していないのが、残念でなりません。
ということで、推します。