勝手に1日1推し 43日目 「違国日記」

「違国日記」ヤマシタトモコ     漫画

ヤマシタトモコ先生の「違国日記」は無料漫画で知りました。画風とタイトルが好みでしたので、読んでみよっかなーって。恐れ入りながら、先生&作品のこと知りませんでした。こんなに素晴らしい作家さんを知らずにいたなんて、バカヤロー、私。豆腐の角に頭をぶつけて死ぬレベルの失態です。人生損するところでした!

「違国日記」を最新刊まで読後、過去作も読ませていただきました(「ドントクライ、ガール」「HER」)が、どの作品にも通ずる先生のスタイルがかっこ良過ぎて、素敵過ぎて、泣けました。一人ひとりをとても大切にしてくれているんです。尊重し、受け止める。どんな自分でも許してくれる、別にいいじゃんって流してしてくれる。「普通」という呪いから解き放ってくれる。本当に先生の作品を読むと元気になります。息をするのが楽になります。本音を赤裸々に語ってくれる登場人物たちが大好きです!言葉選びも秀逸で、私たちが感じていても、思っていても、言語化できないようなもやもやを言い当ててくれて、何度、「そうよ、そうなのよ!」と叫んだかしれません。素晴らしい!

さて、「違国日記」ですが、突然の事故で両親を亡くした朝と朝の母親の妹、槙生(まきお)が共に暮らすことになり、その日常が描かれています。朝はまだ15歳の子ども、槙生は30代の小説家、2人はほぼ初見の状態での同居です。自分を確立しきっている、今まで会ったことのない種類の大人である槙生に朝は戸惑います。あまりにお母さんと違うって。

「違う国のひとみたい」

って。その槙生の言葉に導かれるように日記を書き始める朝。

「誰が何を言って何を言わなかったか、二度と開かなくてもいい、悲しくなった時、それが灯台になる」

って、槙生ちゃん!なんつー声掛け。シビレル!

朝にとって「???」が多い槙生だけれど、正直で真っすぐな言葉に朝もだんだん自分自身や親との関わりについて考え始めます。

「あなたの感情はあなただけのもので誰にも責める権利はない」

ってさー、15歳の時、誰かに言われてみたかったな。

というように、終始こんな感じで、朝は振り回されまくり。庇護のもとにある子どもとして生活してきた朝には、そりゃあそうでしょ?って話なわけですが、でも私は、子どもとしてではなく、1人の人として対等に接する槙生をとても好ましく思います。

「愛せるかわからないけど、決して踏みにじらない」

とは、まぁ、実際15歳の子に言うのはどうなの?と思わないでもないですが、うわべの優しさや甘い言葉の100万倍いいと思います。突然、何の準備も経験もないままで子どもを受け入れ、通り一遍の対応ではなく、嘘のない心からの対応をする槙生は立派です。朝は今まで経験したことのない出来事の連続で、考えもしなかったことに気づいたり、苛立ったり、孤独に襲われたりしながら、両親の死に向き合い、前に進んで行きます。槙生も朝と接するうち、不器用ながらも違う国の存在を意識し、考え、思い出し、受け入れ、変化します。

はぁ、私の語彙力では、とても表現しきれませんので、是非ともご一読いただきたいと思います。とにかく各巻、各ページ、どのエピソードも心に刺さりまくります。自身が体験し、感じたことのある状況を想起させることも多く、とにかく素晴らしいです!

朝を諭す際に出てくる槙生ちゃん語録で、私がとりわけ気に入っているものは過去分詞についてです。てか、「過去分詞」って英語以外で聞いたことあります?私は初めてでした。動作が続いている、それは未来に繋がっていることで、断ち切らなくていいってことだって。あぁ、ほんとそうね。一家に一人槙生ちゃん~。私も毎度、諭されております。ありがたや。

槙生の交友関係がまた多種多様で素晴らしく、槙生を理解し、愛していることが見て取れます。朝にとっても素敵な大人たちの影響は大きいです。

最新刊7巻では、女子の医大での不正入試問題やマスキュリニティについて触れており、ますます目が離せない展開に。ラストでの朝の言動は槙生でした。感涙。

本作は是非とも必読文献として、図書室などに置くべき。多様性や家族の在り方、親子関係(姉妹関係)、男女平等、等々、現実に照らした背景が特別感なく描かれているので、読みやすくて、気負いなく様々な問題を考えるきっかけになるかと。多感な世代にはまた違った形で刺さるものがありそうです。

「三角窓の外側は夜」も先生の作品なんですね?知らなかった!絶対読みます~。と同時に、槙生ちゃんの書いた小説、読んでみたいな。きっと素敵だろうな。

好きだと長くてなって、困るね。最後にヒトコト「乾いた寿司は殺す!」で〆ます。

ということで、推します。

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