勝手に1日1推し 50日目 「オールドファッションカップケーキ」(続編含む)
「オールドファッションカップケーキ」(続編含む)佐岸左岸 漫画
100日を目指し1日1推しを続けて参りましたが、ついに半分!50日目!やったー。いやはやここだけの話ですが(?)、毎日更新を目指しておりましたのです、ハイ。こちらは全然無理でした~。えへっ。しかし、続けることに意味がある!と勝手に自身を鼓舞し、引き続き、推して推して推しまくるぞ。と決意を新たにしている所存です。
さて、本日は世間的にも私的にも熱~いBL作品を推しましょう。すごく良きです。とても評判が良い作品でしたので読んでみたところ、大正解!!こんな素敵な作品に出会えて幸せでした。続編も変わらず大正解!!好みド真ん中でした。佐岸左岸先生、ありがとうございます。本作ファンのみなさん、ありがとうございます。
四十路を目前に人生に不満はないが、味気ない毎日を送る会社員の野末さんと、彼の部下、外川くんのお話です。日々の暮らしの中で関係性を深め合う優しいお話でした。
ストーリーはひとまず置いておいて、何より私を虜にしてやまなかったのは、映画的な構図と演出です。素敵、素敵、素敵過ぎます!!行間を読むってあるじゃないですか?私、アレ、大好きなんですよ。想像する。妄想する。空想する。夢想する。その要素が詰まっていました。
まずは、何気ない日常の1コマ、部屋の中、料理、スイーツ、玄関の靴、ハンガーにかけたコート、会社の中、街角、などが切り取られ、随所に散りばめられているところ。漫画で、ここまでたくさんこういうシーンが挟みこまれていることはあまりないんじゃないかな?と思います。日常のこういう風景カットこそ、登場人物たちがどういう環境で生きていて、何を大切に生活しているかを感じさせてくれます。直接的な関係はなくても、物語に彩を与えてくれる、この生活感を感じさせる風景に、私はとてつもなく惹かれてしまうんです。コラージュのようで芸術的でした。絵がきれい!余談ですが、是枝監督の映画がこんな風に静止画を挟み込む手法で撮られてますよね。「歩いても歩いても」が好きです。
次は、アングル。上、下、斜め、正面、真横と、様々な視点で描かれています。俯瞰した目線だったり、当事者目線だったり。タイトルにあるように、スイーツがたくさん登場しますが、そのスイーツ1つとってもアングルを変えて描いていることで、紙上の世界に引き込まれつつ、現実に近しい感覚を覚えます。
そして、遠近。同じカットでも引きと寄りでは全然違った印象を受けるものです。本作では、例えば、「1人分の間が空いた距離にいる野末さんと外川くんの全身カット(引き)の次のコマが、かなり距離を詰めた2人の足元のカット(寄り)」が印象的です。あぁ、どんな絡みよりエロティックでドラマティックに見えます。先生のセンス、抜群です!好き過ぎる!!
最後に、これが最っ高に興奮するポイントだったんですが、肝心なところを見せないという演出です!!告白のシーンなんて、真正面から「好き」って言わせちゃうじゃないですか?見つめ合ったりだとか。そこを敢えて見せていない。言葉で、そして前後の描写で魅せる。見えない何かを想像する時の感情の昂り、半端ない!告白なんて、その時の顔が、表情が見れるのが相手だけって考えると最高じゃない?発作を起こさんばかりに心臓がぎゅっとなります。何回ぎゅっとなったかしれません。死ぬじゃん。絵がキーである漫画で敢えてのこの演出、想像力を何十倍にも膨れ上がらせ、妄想させ、空想させ、夢想させます!!
お話はいたってシンプルなのですが、こういう映画的な構図や演出がとても効果的で、エモーショナルな広がりをみせています。
そのうえ、言葉の端々から感じられる上品さ、会話の端々から感じられる思慮深さが、年齢を重ねた社会人たる人物像をしっかり築いていて、物語をより際立たせます。
「わかります。同性から口説かれることが いまだに多くの人の 常識の範疇にないことは」
って、なかなか言えないよね、こんな風に。相手のことを最大限思いやりつつ自分の思いを告げるって、難しいよ。きっとスマートなエリート会社員なんでしょうね・・・。
2人の関係性に悩むシーンも、とにかく理路整然としていて、そこに感情もちゃんとのってるいんだけれど、大人なんだよねえ。
若さゆえの猪突猛進ぶりもそれはそれで魅力的だけど、自制と熟考の末の抑えきれない思いっていうのは、より甘美ですね。続編のメロメロ野末さんとか、可愛すぎます。最後の恋って、はあ、ロマンチックです。
何かいろいろ思いもよらぬ方向から心に攻め入ってくる作品ですので、一読をオススメします。先生の作品って他もこんな感じなのかな?読んでみたいです!あと、昭和なデフォルメも私的にはツボでした。ぐるりん眉毛とかもじゃもじゃ悩みとか。エモい!
はあ、書いた書いた!50日目も無事、大好きな作品を推せて、余は満足じゃ。
ということで、推します。