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はじめてのミニシアター

ミニシアターに行こう、と決めたのは、1ヵ月ほど
前のことだった。


西荻窪で偶然はいった小さなカフェで、帰りがけに
「ユジク阿佐ヶ谷」の細長く折り畳まれたパンフレット
のようなものをみつけた。

表紙がずっと観たかったミッドサマーのワンシーン
だったから気になって、手に取った。

そこには「ユジク阿佐ヶ谷が8月28日を持って無期限
の休館」と書かれていて、それまでの上映作品と
スケジュールが記載されていた。

ミニシアターには前からずっと行ってみたいと思って
いて、中でも特にユジク阿佐ヶ谷は、阿佐ヶ谷という
街が好きなこともあって、いつか行こうと思っていた。

けれど今までなかなか機会をつくれずにいて、
気がついたらコロナ渦に突入していた。


自粛期間中は、ミニシアターを守るための署名活動や
募金にはじめて参加した。

そういう経緯もあったからか、今回のユジク阿佐ヶ谷
の無期限の休館は、わたしの中でもなんとなく、
寂しさというか違和感というか無力感というか、

疼くものがあって、最後のチャンスかもしれない、
と思い、足を運んでみることにした。

大きな仕事と仕事の合間、ひと段落できた今日、
夏休みを取った。

ちょうど観たかった映画「ひなぎく」の最終上映日
だったので、ベストタイミングだと思った。

当日の0時からオンライン予約ができるとHPで見て、
日付が変わった瞬間にチケットを予約する。

人数制限で30人までしか入れない、と書いてあった
ので、早くしなきゃ、と焦る気持ちを抑えながら
手順に沿って操作をする。

指定の種類以外のカードで支払おうとしていたことに
気づかなくて、4回くらいエラーになってしまった時
は、ここ最近で一番どきどきしていた。

無事に予約ができて、メールを何度もスクショして
眠った。


そして今日。緊張していたのか、休みの日なのに
いつもと同じ時間に目が覚めた。

遅刻魔なので直前までハラハラしていたのだけど、
ユジクに到着したのは30分前。

整理番号を入力して、チケットを発券する。

ロビーは家のリビングよりも少し狭いくらいの
大きさで、正面に小さなカウンター、その下に
パンフレットなどのグッズや飲み物、お菓子などが
並べてあった。

全体的にあたたかみのある茶色い空間で、もっと暗くて排他的な空気が流れているところだと思っていたので少し安心する。

小さな椅子に浅く腰掛けて、まわりをキョロキョロ
見回しながら開場時間を待つわたしは、端からみたら
明らかにミニシアター初心者だったと思う。


上映20分前にはスタッフのお姉さんがマイクで
整理番号を読み上げていく。

慌ててレジで購入したホットチャイはもう一人の
お姉さんが目の前で淹れてくれた。

あつあつのカップの底を左右の手で持ち替えながら、
上映室にはいる。

17番目だったので、席はだいぶ埋まっていたのだけど、一番後ろの真ん中がまだ空いていた。

座ると、ちょうどスクリーンの目の前、真正面で
画面と視線が合う。

あれ、ここ、一番正解なんじゃないか…?

そう思って少しにんまりする。

予告もほどほどに、部屋はすぐに暗くなって映画が
はじまった。


映画は、気づいたら一瞬で終わっていた。

そして覚悟していた通り、理解できたかと聞かれたら
ほとんど理解できなかった。

だけど間違いなく、観てよかったと思った。

帰ったらちゃんと勉強しなくちゃとは思っているの
だけど、理解できなくても、いくつかのシーンや
台詞が心に残った。

映画の感想は、またfilmarksに書き留めておこうと
思う。


こうして、わたしのはじめてのひとり映画、そして
はじめてのミニシアター体験はあっけなく終わりを
告げた。

はじまる前はあんなに緊張していたのに、終わって
みると案外なんてことないな、なんて強気に思ったり
している自分がいる。

まだまだわたしは映画の知識も観た映画の本数も
「映画好き」の人たちと比べるとかなり少ないし、
映画館に行った回数も少ないけれど、ミニシアター
にはまた行きたいな、と思う。

そしていつか、自分のお気に入りを見つけて、
そこの常連になりたいなあ、と夢みたりしている。




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岡崎菜波 | nanami okazaki
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