自分じゃなくて、誰かのために。 ”文章力を磨く”ことを決意した理由
「好きなことを、仕事にする」。
ここ数年、よく耳にする言葉だ。
数年前のわたしは、そんなことができたら幸せだろうなあと思いつつ、そんなものは夢物語だと思っていた。
好きなことを仕事にできたら素敵だけど、それができるのは、きっと一握りの人だけ。
好きなことと、仕事は別。そう思って生きていた。
だけど今、わたしは自分の好きな「文章を書く」ことを、仕事にすると決めている。
きっかけは、2年前のある出来事だった。
これは、わたしが「好きなことを仕事にしよう」と心に決めて、SHE likesに入会するまでのお話。
「好きなことを、好きと言っていいんだ。」彼と出会い、心が呪縛から解け始めた夜。
「小さい頃はずっと、小説家になりたかったんです。」
2019年、春。わたしは京都の鴨川沿いのカフェで、初対面の先輩に、今まで口にしたことがなかった「幼い頃の夢」を熱く語っていた。
自分が好きなこと、将来やってみたいこと。
それらは自分でも「こんなこと思っていたんだ」と驚いてしまうようなことばかりで、中には現実的ではないことも多かった。
だけど彼は終始静かに頷いて、時折「ええやん」「面白そうやね」と言ってくれた。
そして最後に、「いつか一緒に、仕事できたらええな」と笑った。
彼はわたしの話をすべて肯定してくれて、一度も否定や批判をしなかった。
この時の彼との出会いは、「自分が好きなことを、口に出していいんだ」「やりたいことを、やりたいと言ってもいいんだ」ということを知る、大きな転換点となった。
この日から、わたしの心は少しずつ、呪縛から解け始めた。
「好き」を口に出したことで、舞い込んできた初めての仕事。
「岡崎さん、小説書かへん?」
半年後、久しぶりに先輩から連絡がきた。
スマートフォンの画面に映し出されたそのメッセージが目に入った瞬間、思わず息が止まりそうになる。
先輩はわたしが「文章を書くことを仕事にしたい」と言ったのを覚えていてくれたようで、彼が関わっている京都の民泊のPRで、「小説を書く」という仕事を打診してくれたのだった。
お仕事で、小説を書く。
しかも、大好きな、京都を舞台にした小説を。
信じられなかった。
好きなことを好きだと言って、よかった。
恥やプライド、世間体なんて気にせず、やってみたいと口にして、よかった。
この時はじめて、「好きなことを、仕事にする」という言葉が、現実のものとして、わたしの身体にすとんと落ちてきた。
自分のためだけじゃなく、誰かのために。「文章を書く力」を磨きたい。
こうしてわたしは、はじめてお仕事で小説を書き、お給料をいただいた。
今までの人生で一番、「自分が誰かにとっての価値を生み出した」という実感で心が満たされた瞬間だった。
小説を読んだ友人や会社の先輩たちからは、
「面白かった。この民泊に行ってみたくなった!」
「ここの感情描写に心を動かされた。感動したよ。」
と、たくさんの感想が届いた。
…けれど。
「わたしの書いた小説によって」その民泊が大きな話題を呼ぶことや、集客状況が大幅に改善された、という知らせが耳に入ることは、残念ながらなかった。
自分は「小説を書く」という夢に一歩近づくチャンスをいただいたものの、その仕事をくださったお客様の目標は、果たして達成できたのだろうか。
自分は、そこにどれだけ貢献できたのだろう。。
大好きな京都の、心から素敵だと感じた場所だったからこそ、ここの良さを充分に伝えられなかった自分の今の実力に、不甲斐なさを感じずにはいられなかった。
この時、わたしは自分の現在地を、現実のものとしてはじめて知った。
わたしにはまだ、実力が足りない。
これからもっと、力をつけなきゃいけない。
好きな人やものの魅力を、もっと多くの人に、自分の言葉で伝えるために。
自己満足じゃなく、届けたい人に、きちんと想いを届けられるように。
だからわたしは、「文章を書く」という力を、自分のためだけじゃなく、自分以外の人たちのために、磨いていくのだと決めた。
好きな人やもの、場所の魅力を、自分の言葉で誰かの心に届けたい。
「知って欲しい」「伝えたい」と思っている人の代わりに、もっと遠く、もっとたくさんの人たちに、届ける術を身に付けたい。
強い想いを胸に、わたしは今日から、SHE likesで「文章を書く力」を、丁寧に、丁寧に磨いていこうと思っている。
※これは、SHE likesライターコースの「事前課題」で書いた文章を、note用に少し手直ししたものです。
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