鏡の夜 都でこころ 交わりて (前編)
細い道を抜けて大通りに出ると、突然、視界がぱっと開いて何層にも重なる黒々とした瓦屋根が現れた。
「これが……東寺。」
興奮しつつも、声を潜めて少し前を歩く彼に言う。
大通りを挟んで向こう側に建っているとは思えないほどの、圧倒的な存在感。
それでいて、心にひとときの静寂をもたらすような、不思議な空気を纏っている。
実物を目の当たりにすると、その名前を口にするのも慎重になってしまう。
凛とした姿で町の真ん中に聳え立つ東寺は、厳かな表情をしていた。
しばらくその姿に目