鏡の夜 都でこころ 交わりて (中編)
宿から10分くらい歩いたところに、ひっそりと、そのお店はあった。
昔の日本家屋のような、深い茶色の木造の扉。
その茶色と決して混ざろうとせず、涼しげな顔でその空間を区切っている、薄い灰色をしたコンクリートの堅い壁。
照明は落ち着いている、というそれよりもさらにワントーン落としたような暗さ。
随所に置かれている年季のありそうな棚の上には、見たことのない表紙の小説や図鑑、食器やドライフラワーのような物が飾られていて、小さなギャラリーのような空間になっている。
その小さな