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うつろう季節とすみれ色の万年筆、告知

陽が高いうちに外出したら、暑さが和らいでいた。まだ日中は夏の名残を感じもする地元だけれど、陽射しの柔らかさと影の静けさに驚く。もう秋なんだなと肌で感じると、少しだけ息がしやすくなるからいい。

季節のうつろいを感じるとともに、新しい万年筆がやってきた。
ずっといいなと思いつづけていた、ペリカンのスーベレーン M600 バイオレットホワイトのF(細字)。はじめてのペリカン、はじめての吸入式!

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まろやかなミルクホワイトとすみれ色、そしてそのふたつを繋ぐ金色が何とも言えず、可愛い。一番最初に入れるインクには、セーラー 四季織の「夜桜」を選んだ。ゆかしい風情のある、淡い紫にほんのりピンクがさしたような可憐な色。なんでか、ここ数年紫に惹かれてしまう。

万年筆とインクについてはライトユーザーで、沼の淵にずっと佇んでいるといったところなのだけど……やっぱり、自分がいいなと思えるものを手に入れたときの嬉しさと、それを使いながら過ごす時間はいいもので。くるりとキャップを回して外す、ささやかな時間ですらいとおしい。

少し前から友達がしている朝活書写を見ていていいなと思っていたこともあって、諸用ついでに原稿用紙を三種類ほど買ってみた。引用したい文章の長さによって使い分けながら、寝る前にほそぼそと書写をしている。

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スーベレーンはEFを買うつもりがFを買ってしまったのだけど、太めのペン先は持っていなかったし、これはこれでいいな、と気に入っている。私は字が小さくて、友達に葉書を送るときは我ながらちょっと文字数がこわいと感じるので、スーベレーンで字を大きく書く練習をするつもり。

夜、寝る前に薄く開けた窓から秋の匂いを感じながらひとり書写をすると、気持ちが凪いでいく。同時に、書写で抜く文章を探すつもりがついつい読書にどっぷり……ということも、よく起こること。

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季節の移り変わりといえば。夏にしたホテルのライティング仕事が、公式サイトにも反映されている時期になっていたので、見に行った。

一度自分の手から離れた文章というものは、私の知らないところでふわふわ羽ばたいていたり、のんびり泳いでいたりする。その様子を眺めるのはちょっとだけこそばゆくて、知らない街を懐かしく思いながら探索するような面白さがある。

あまり営業をしていないものの(したほうがいい)、ありがたいことに細々とライティングのお仕事をいただいており、何やら話題にしてくださっているようで……。知人から、「あれ書いたの七木さんだったんですね! 素敵だなって思ってました」と連絡をもらえたのも嬉しかったな。知らないところで褒めてくれるのも嬉しいけど、直接褒めてもらえると、より嬉しい。

この件は引き続きご依頼いただけることになったので、いまは資料を見つつ、わくわくしながらイメージを膨らませているところ。というか、取材が週末からはじまるので、そろそろ準備に力を入れないと。有名な文具屋さんのある街へ行くので、あわよくば新しいインクを買えたらいいな……とひそかに狙っている。

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仕事や用事がない限り、本の発売日にならないと街中まで出ないため、生活圏ですべてが完結してしまいがち。そうなるとだんだん気が塞がってしまうので、生活に必要な最低限のものだけでは心が潤わないのだな、と感じる。

……ということで、気分転換がてら、地元のおしゃれホテルに一泊した。

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合間にホテル内のバーでお酒を飲みながら本を読みつつ、ゲラに修正をいっぱい入れる。でもまだまだ足りないな、と思う。しっかりとした本になることへの緊張や恐ろしさを感じつつ、できるだけ愛を込められるように、唸りながらことばを捏ねている。

ゲラは、秋に出る共著『大人だって読みたい!少女小説ガイド』のもの。
どんな本なんだろう? という方に向けて、さっくり分かりやすい紹介を書いたので、よろしければご覧ください。

本が出るよ、というお知らせをした友人が予約をしてくれて、嬉しい。お知らせをするとみんな祝ってくれて幸せなのだけども、これは購入を迫っているようだな……とも思いつつ、愛を感じた。ありがとう。愛。もう少し、ぎりぎりまで、ゲラという名の己と向き合います。


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