私と、降り積もる彼女たちのこと
いままでに読んできた本をふたたび手にするとき、私はきまって、あなたの姿を見つける。
その一冊を読んだ季節のにおい、日の陰り、部屋の明かりの白さ。本を読みながら迎えた朝の、窓の外で始発の電車が走る音。通学路や教室の片隅、あるいは暖房のきいたバスの籠もった空気が肌に触れる感触。
一冊の物語をふたたび訪うと、そうした思い出の欠片が、ほんのすこし香って、文字の間に溶けていく。そのとき一瞬垣間見えるあなたは、まだ小学生くらいであったり、かと思えば、きちんと大人になっていたりする。あなたは、私のことなんて気づきはしないのだけど。あなたは、たいてい横顔しか見せてくれないのだ。ただひたすら、文字の海に遊んでいるから。
幼い頃から本が好きだったし、本にまつわるエッセイを毎月連載させていただいていたこともある。どんな場所でも、私はいつだって、気がつけば「本が好きなひと」として扱ってもらえていたように思う。だけれど。
もしかしたら、あなたの傍らにずっといる「彼女たち」のことは、あまりまとまったかたちで書いたり、言ってきたことがなかったのかもしれない。ずっと好きでいるし、好きだと言い続けてきたけれど。ちゃんと好きだって伝えたこと、あったかな。なんて。
……そんな、どうしようもなく押し寄せてくる感情を持て余しながら、私にとって大切な存在である、「少女小説」についての短いエッセイを書きました。
2019年5月12日(日)COMITIA128 (東京青海展示棟Aホール)
企画合同誌『少女文学 第一号』
F01a「少女文学館 本館」・F01b「少女文学館 別館」にて頒布予定
華やかな執筆者のみなさまの小説に、「あなたと彼女たちについて」というエッセイで混ぜていただいています。一編一編大事に読む息抜きにお読みいただけたらな、と思います。
▽『少女文学』の詳細については、こちらをご覧下さい。エッセイのサンプルも載っています。
ずっと緊張して、緊張しているのですが、個人的にもとっても楽しみにしています!(ので、飛行機を取って遊びにいきます)
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