伸ばした手の先。
いつかの自分がそこにいるようでモヤモヤする。
いまだって、見つかってなんか無い。
それでもそれが在ることは知ってる。
見つけたと思った途端に、亡くしてしまったけど、かつてはこの手にもあった。
私を見つけてくれたのは、大好きな人の守護をしていた精霊だった。
死にかけてるくせに、いつも笑って平気なふりして、誰も気づかない私を、その人は見つけた。
「悩みなんか無さそう」
人生うまく行ってない人間にたいしての適切な言葉じゃない。
だけど、そう見えたくらい私は私を隠すのがうまかった。
おそらくその時点ですでに人格の解離を起こしていたのだと思う。
「バイバイ、またね」
別れた後に来るどうにもならない焦燥感と、それでも頭の中だけはハイで、どうにも眠れない日々。
こんな気持ちを味わうなら、出逢わなければよかったのだろうか。
それでもハイな頭は毎日が楽しくて、彼女の愚痴も泣き言も死にたいと言う欲求もすべて、それでもいいからこんな日々が続けばいいと思ってた。
ある日、彼女が電話越しに言った。
「(精霊)に代わるね。」
少しの間。
すぐに電話の向こうの気配が代わったのがわかった。
「そんなに緊張しなくていいよ」
彼は言った。
「いつかみんなで笑える日が来る。
そうでないなら何故、僕たちは、、、」
※
彼は一度、彼女の死に目に会ってる。
彼女がカタキリをして、もうひとりの自分を彼と共に過ごさせていた時期があった。
けれどそれは悲しい形で終わりを告げることになった。
彼女は首を水晶でかっ切って崖から飛び降りた。
そうするしかない事情があった。
彼女が最期に見たのは、彼が泣きながら彼女の身体を抱く姿。
彼はどう思ってただろう。
彼女は現世でも死にたがっていた。
きっととても歯痒かったと思う。
※
なにを話したか、緊張していた私は覚えていない。
ただ、泣いてたように思う。
私がみんなを見つけるよ。
そう言った記憶がある。
彼女に戻ってから言われた。
ごめんね、と。
彼に、あの子はお前が見てやらないと危うい、そう言われたそうだ。
気づいてあげれなくてごめんねと、何度も言われた。
違うよ。
違うんだよ。
こちらこそ、気づいてくれて、ありがとう。
酷く泣いた。
※
私は幸運だったのだと思う。
出逢えたのだから。
亡くした今、どうしたらいいのか、まだわからないまま。
※
それは確かに存在すると言うことに、気づけずに無視したまま。
素通りしてはいないのか、
目を伏せてはいないのか、
自分だけしか見てないのではないか、
可哀想な自分に酔ってはいないか。
大切なこと、とてもとても大切なこと。
忘れてしまってはいないのか。