「違国日記」ヤマシタトモコ
長い間新刊がでるのを楽しみにしていたけどとうとう最終巻。
これは、わざわざ買いにいく本。
何軒かあった近所の書店が全て閉店してしまったけれども、わざわざ電車に乗って別の町の書店へわざわざ買いにいく本。
槙生と朝の、いきなり始まった共同生活は当然山あり谷ありで。
その谷は決して埋まることはないし、山は崩れることはない。
お互いの特性に驚きつつも自分の生き方、在り方を考えながら、生きていく様は本が出る度に楽しみだった。
人はみんな違う国に住んでいるのだ。
それぞれの国に近づいたり、やっぱりわかり合えないわと離れたり。
人の心は惑星のように距離がある。
そして、槙生の実里に対する憎悪、恐怖、黒いもの。
この不器用な人はどうやって克服するのだろうかと。
懐かしいけど大嫌い。
嫌いなのにそっくりで。
教えられてもいないのに、まるで足跡をたどるかのように私は姉と同じ行動をする。
私は姉Aがたい嫌いだ。
私は槙生に克服してほしかった。
忘れ方、乗り越え方を教えて欲しかった。
こんな風に、例え想像上だとしても、実里を理解し、実里の周りのものも大切に思えるようになって良かったなあと。
朝を大切にしなければと思って大切にしていた。
いつしか大切なものになって大切にしていた。
良かったね。
良かったね。
朝もきっと自分が望んでいた大人にちかづいているのだろうと思った。
ヤマシタトモコは時々、とんでもない顔を描く。
綺麗な槙生が男か女かわからないような顔をしている。
でも男か女かというより、男でもない、女でもない、槙生という存在。
槙生というひとつの魂がそこにあるんだな、と思った。
本質が其処に在る。
そういうことなのかな、と感じた。
笠町くんは相変わらず好き。
塔野先生も好き。
フラットな状態を保ちつつ、周りの人を大事にしている。
こういうわきまえた人になりたい。