③精神病院からやっとの思いで外泊「病院に戻るなら死ぬ。」と言った父の話し。
自宅へ帰りたい”という父の願いを叶えるために、兄夫婦と格闘の末、やっと12月31日から一泊だけの外泊許可を勝ち取った、その後の話です。
これまでのお話はこちら↓
(話が増えてきたらまとめる予定です)
あ〜でもない、こ〜でもないという理由を並べたて、父が自宅に帰ることを認めようとしない兄夫婦。担当医や看護師長の助けを借りて何とか一泊だけの外泊許可が出た。
なんで一泊だけなんだよ〜〜〜!!!と心の中で叫んでいたが、とにかく私は
一分一秒でもいいから、父を精神病院という場所から連れ出したかった。
許可が出るとすぐに、実家に花を飾ったりお節料理を用意したり、寝具の用意をして父を受け入れる準備をし、心待ちにしている父を迎えに行った。この時は、少しでも父にお正月気分を味わってもらいたい気持ちでいっぱいだった。
もう自力では歩くことさえ出来なくなっていた父。車椅子での移動だった。そしてオムツをしている父。何かに怯えているようにおどおどしている父。数ヶ月前に会った時とは別人になっていた。
精神病院という場所が父の心身をこんなにも蝕んでしまった。
このままじゃ、すぐに死んでしまいそうで、私は怖かった。何としてでも父をあの場所から救い出して私が何とかしなければ…と強く思ったことを憶えている。
久しぶりの自宅に帰り着くと父は、真っ先に仏壇の所に連れて行って欲しいと言った。そして、よろよろの身体でローソクと線香に火を付け、その後、しばらく手を合わせていた。
その姿を見ていた私は、
やっと、帰って来られて良かったね。
と心の中で声を掛けた。
それから、目だけでも楽しんで欲しくて、お節料理を父の前に並べたが、ほとんど食べられなかった。食べることもできず、ベットの上で寝ているだけの父だったけど、それでも安らかな顔をして自宅での時間を楽しんでいた。
明日の午後3時までに帰る約束になっている。 時間がない。短すぎる。
何とかならないものかと考えていたら、父が私を呼んでこう言った。
「明日は絶対に帰らない。帰るんだったら俺は死ね。殺してくれ。」と。
父の魂の叫びだった。私もそうしてあげたい!
すぐに病院に電話をしてそのことを話すと、兄に連絡して折り返し電話すると言われた。
その後、「お兄さんの許可が出ませんでしたので、明日予定通りお父さんを連れて帰ってください。」と連絡があった。
「じゃあ、兄の許可が取れたら外泊を延長してもらえるのですね?」と聞く私。
「ええ、お兄さんの許可が出れば何の問題もありませんよ」との答え。
私は、すぐに兄の携帯へ電話を入れた。でも、私が父の外泊を延ばしたいという意思を、病院から知らされている兄は、何度掛けても出てくれない。
だから私は留守番電話に「父の意思に従って明日は帰りません。どうしてもと言うならここに父を迎えに来てください。」とメッセージを残した。
すると、私には何の連絡もしてこない兄は病院に圧力をかけた。病院の力で父を連れ戻すようにと。病院のスタッフが「明日、お父さんを連れてきてもらわないと困るんです。」と言ってきた。
普通の入院なら本人の意思が尊重されるが、精神病院へ保護付きの入院をした場合は、父の意思が認められない。
なんだよ、この制度!
時と場合によるでしょうが!
こんなの守ってたら父が…
私は、ここで腹をくくった。
兄に何を言われてもいいと。
そして、病院スタッフへ
「じゃあ父に死ねというんですね。そちらに帰ると死ぬと言ってるんですよ!殺してくれ!とまで言ってるんです。そんな父を無理矢理連れて帰ることは出来ません。後、数日でいいんです。父が帰ることを納得するまで待って下さい。数日したら私が絶対連れて帰りますから」と言った。
すると、さすがに病院スタッフも何も言えなくなり、外泊延長を認めるとか認めないの明言はしなかったが「じゃあ、薬が一泊分しか出ていないので取りに来てください」と言った。これは実質的に延長を認めることを意味していた。
父は、私が奮闘している間、心配そうに事の成り行きを見守りながら「絶対帰らない」とつぶやくように繰り返し言っていたので「延長できるよ」と伝えると安堵したようだった。そしてその時、3日後には帰ることを約束してくれた。
3日後、帰りの車の中で父は何度も「トイレに行きたい」と言って途中で車を止めさせた。でも、実際にトイレに行く行動はしなかったので、帰る時間を遅らせる為に時間を稼いでいるんだろうなと感じた。そんな父を見ていて本当に切なかった。
だから私は、
「一度病院には戻るけど、私が必ずあの場所から連れ出すから。約束するから。
だから安心して帰ろうね。」と何度も言った。
そして、病院に父を送り届けた私は、すぐに東京へ戻ることにした。落ち込んでる暇はない。
決意を新たに!
父を精神病院から救い出す為に。
続きは次の章にて。
◆2017年12月の日記
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