⑨兄に隠された父、再会することができずあの世に旅立ちました。
父を探して弁護士同行で熊本へ行った私。
結局、探し出すことも出来ず東京へ戻った。
果たしてこの後どうすればいいのか…
途方に暮れてしまった。
弁護士は探す手立てを模索してくれてはいたが、私は気がきではなかった。
なぜかと言うと、最後に見た父はかなり弱っていたから、また会える時まで元気でいてくれるかどうか。
時間だけが過ぎていく中でかなり焦っていた。
その後、兄も弁護士を立ててこちらに連絡してきた。だから、双方の弁護士間で「父の居場所を照会する」ことについて話し合いが続いていた。
これを、弁護士照会というらしい。
そしてある朝、私の携帯電話が鳴った。
出ると「○○ちゃん、お父さんが亡くなったこと知ってる?」と言う言葉が耳の中に入ってきた。
実家近くに住む昔から知っている知人だった。
母が自殺したと聞いた時も衝撃を受けたけど、
この時の私は、それ以上にショックを受けた。
だって、また絶対に会えると信じていた父が、
会えないまま死んでしまったから。
余りの衝撃に
私は、足がガクガクと震え出しその場に立って居られなくなった。こんな経験は初めてだった。
ベッドの所まで行って座ろうとしたが、足の震えが止まらずよろめく私を、側にいた息子が支えて運んでくれた。
涙も全く出ない。
父が亡くなったことを、兄は私に連絡してくれなかったんだ。第一報は近所の知人からだ。
兄のことを、同じ人間とは思えなかった。
あんなに探して会いたがっていた妹と父が会えず亡くなってしまったことを、心苦しく思わないのだろうか。それとも、最後まで会わせずに隠し通せたことに、胸を撫で下ろし喜んでいるのだろうか。
様々な想いが去来していた。
まぁ、心苦しく思うような人間なら、最初から父を隠したりしないだろう。お金の為に、実の親子である父と娘を会わせなかったこと、兄は死ぬまでに後悔することはないんだろうか。
兄に良心というものはないのだろうか。
これまでの記事にも書いてきたけど、私は裁判所を通して遺産放棄をすると家族には表明してきた。父の強い希望で放棄は叶わなかったが、私はいつも本気だった。それでも、私がお金目当てだと疑い続けた兄夫婦の顔を
札束で叩いてやりたかった。
私は基本的に人間は善だと思っていて、どんなに悪い事をした人の中にも善を見つけるようにしていた。でも、この時の兄に善を見出す慈悲の心など持てなかった。
自分の家族がこんな人間だったなんて!
父の会社を自分の物にしたいが為に、私を騙して父を精神病院に入れて弱らせて、その間に、文書を偽造して父の承諾なしに勝手に会社の代表取締役を自分に書き換えた兄。
そして、父と娘を会わせない様に隠して、会わせないまま父をひとりぼっちで死なせた兄。
韓流ドラマの悪役にも負けず劣らずだ。
兄の行動は、全て「金と地位」に対する欲望が
基本になっている。
私の周りの人々はこの話を聞いて怖がっていた。
後から分かったことだが、父の最後は、老人施設に入れられひとりの時に亡くなっていたそうだ。
そんな寂しい最後にするのなら、父を私に預けて欲しかった。もう一度、父の手を握って微笑みかけたかった。
お金なんかいらない!
父と会うことだけが私の望みだったのに…。
お金に取り憑かれた人達には敵わないのだろうか。悔しい…なんて私は無力なんだろうと悲しくなった。
でも、人生は最後の最後まで分からない。
今の状況がずっと続く訳がないから。
私は、兄が、死ぬまでに自分がやったことを懺悔して、少しでも人間らしさを取り戻してくれることを今でも願っている。
最後に…父の死の知らせを聞いた時、涙さえ出なかった私は、その数日後、あまり眠れない朝を迎え、早朝、誰もいない会社の事務所に行って仕事をしていた。
その時、突然おお粒の涙がこぼれ始めて、あれっ?って思ったら、その後、涙が止まらなくなって大きな声を出して泣き始めてしまった。
それはもう、大きな大きな声で、わーん、わーんって😭子供のように。やっと悲しみを放出できた瞬間だった。人はあまりにも衝撃を受けた時にはすぐには泣けないみたいだ。
今回は最もヘビーな内容だったかもなので、
読んで頂いた方、ありがとうございます。
続きは次の章にて。