⑪父の葬儀に行かず、固く誓い約束したこと。
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父の葬儀の日、私は弁護士事務所にアポを取って面談に向かった。
これからのことを相談する為に。
熊本まで同行した弁護士2名は、自分達の力が及ばず、父を探し出すことがで出来なかったことに負い目を感じていたようで、私が文句を言いにくると思っていたそうだ。
だが、私はこれまでの協力にお礼を言って、これから新たに、兄をまともな人間にする為に、法の力を借りて肉親としての愛を持って戦いますと宣言した。
私が父の葬儀の日に、弁護士事務所へ出向いたのは、自分の気持ちの平静を保つ為でもあった。
実の父の葬儀に行かない…決心はしたものの、胸が痛まないわけがない。そして、父に対する後ろめたさや、顔を見て最後のお別れが出来ない悲しみなど、色々な感情が渦巻いて、心が不安定にもなっていた。
だから、弁護士事務所へ向かい行動する事が、葬儀が行われているその日を、なんとかやり過ごす支えとなっていた。
私は弁護士に向かって
「今日は父の葬儀の日です。その葬儀に行かず私は新たな決意を持って来ました。兄がした事は人としてやってはいけないことだと思うんです。今の状況では、兄に助言する人もいなければ、誰か助言したとしても聞く耳を持たないでしょう。だから、私は法の力を使って兄が少しでも真人間になってくれるよう戦います。」と伝えた。
すると、弁護士は
「人は変わりませんよ。」と言った。
そんなことは私にも分かっていた。
でも、この世に絶対なんてことははい。
やってみないとわからないじゃないか。
ダメだと決めつけて何もやらず諦める訳にはいかない。
そして、
相手が変わる変わらないという結果だけが大切なのではなく、自分自身が行動することが何より大切だと思った。
だから「それでもいいんです。お願いします」と答えた。
これまで、弁護士には父の捜索や面会などについて、主に動いてもらっていたが、今後のことについて、その日に新たな契約を結んだ。
(内容については次回の章にて)
ここから、兄と私の新たな戦いが続くことになるのだが、
正直言うと、この頃の私は世間知らずで弱かったので、兄と戦うことについて決心するまで迷いに迷った。
身内とはいえ、こんなひどい人達と関わらずに生きていきたいと、逃げたい気持ちもあった。漠然とした不安も私の心を覆っていた。
でも、父は私に「兄のことを頼む」と言って死んでいった。その父の願いを叶えることが、葬儀に行けなかった私から父への弔いとなるだろうと考えた。
そして、父の願いを叶えるまでは、父の墓前には行けない、父に顔向け出来ないという気持ちもあった。
私がお墓に行くまで待っててね。
お父さん、約束したよ。
私、この先、どんなに辛くても最後までがんばるからね、と誓った。
自分が生きてきた人生の中で、最も重い約束と誓いだった。
そして、ここから長い戦いが始まることになるのである。双方、代理人弁護士を立てて。
「葬儀や法事とかお墓参り、これはとても大切なことだと思う。でも、形式的な事に拘らず、心の中で亡き人と繋がっていればそれでいい」と決めて、父の遺した言葉を胸に、墓前に報告しに行くことを楽しみに、戦いの一歩を踏み出したのであった。
父の葬儀については、地元の友人に行ってくれるよう託した。
葬儀の後、友人は私に「お父さん、小さくなってたよ」と教えてくれた。
この父の最期の姿を聞いて、私は約束と誓いを新たにした。