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歌は物語


「白い光の中に山並みは萌えて」

この一文で、きっと『旅立ちの日に』だ!と思う人は多いはず。
ピアノの伴奏を思い出す人もいるはず。

私も両方頭に浮かぶ。

さらに制服の擦れる音、パイプ椅子が少しなる音、体育館の冷えた空気や匂いも浮かぶ。

それから柔らかくて白っぽい、春の朝日を浴びる山並みも浮かぶ。


私が卒業した学校は町中で、山など見えもしない。
それなのに、学校から毎日見る、気にもしなくなるほどそこに在る山の姿をありありと想像できる。

私にとって歌詞は物語。
絵本をめくるように景色を頭の中がかけめぐる。
その中から作詞者の心情を感じ取る。
メロディは色付け。

歌は、鮮やかで、優しい物語達。

『旅立ちの日に』

は音楽の先生が作曲して、校長先生が作詞したものだという。
だから、見送る側にもガツッと響くのかなぁなんて思う。

手の中で大切にしていた鳩をそっと空に送り出すような、そういう感じがする。
なんで鳩かっていうと人間が掴める身近な飛ぶ鳥は鳩かなーって。想像しやすいから。

鳥を持ったことがある人はわかると思うのだけれど、とても柔くて、軽くて、温かいの。鳥って。

大人って…(大人子供ってわけるのはあんま好きじゃないけど、まぁ、)大人って重たくなっていくの。
積み重ねてきたぶん、どっしりするっていい面もあるけれど、子供達の軽やかさって、また違うから、それを近くで見守ってきた人達は、その軽やかで自由で、まだこれから積み重ねていける人生が、どうか輝きますようにって空に送り出す。

前を向いて羽ばたく中で、温かさを失わないために記憶を持たせるんだよ。
それが素敵な記憶だといいよね。

そういう気持ちが詰まってるのかなって。


眩しいよ。私達は地上から見送るのだから。
寂しくて、嬉しくて、切なくて、応援したくて、あの温かな軽やかさが失われないようにって、どこまでも広い世界を見てこれますようにって願うんだよ。

そして思い出すんだろうなぁ。
かつて飛んだ自分のことも。

春の日の光の柔さ。
ぼんやりとした花の香り。
明日も明後日もやってくる毎日。
消えてなくなるわけではないけれど、続いていくだけなのだけれど
それでも一区切りのその時に。

とても人間らしいかなって思う。
人間らしいことは苦手で、私自身は卒業式も含め学校の事はあまり好きじゃないけれど、それとは切り分けて、こういう気持ちはあってもいいし、素敵なものだと思うし、そういう気持ちで送り出せるような、そんな日々の積み重ねだといいと思う。

そんな日々を積み重ねていこうって、それぞれが考えていけるような、思えるような場所があってくれたらいいと思う。
それが何処であれ、翼を動かす原動力であり、心の温かさを保つものであればいい。

どこまでも行けると思えたなら、それこそが心の自由なのだから。

そんなこと思いながら合唱曲を聴いていた。
もう、学校では卒業式の練習とかしてるよね。
小学校の頃は大変だったなぁ。
なんて。
来る春を思ってる。


サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。