思いつき1場面物語 フラスコ
フラスコの中に紫の夜を入れて軽く振ると星が瞬く。
「すごいなぁ、本当に魔法だ」
カウンター越しに私が振るフラスコを眺めた彼は感嘆の声をあげている。
「?当たり前のことだよ」
私にはわからない何かが、彼を揺らして星を生んでいる。
彼自身からも星がこぼれ落ちていることを、教えてあげようかと思ったがやめておいた。
気がついたら光が遠くなるから。
次いでフラスコにオレンジの朝をいれて少し置いて軽く振ると柔い光が生まれた。
これも彼は釘付けで、眩しそうに愛おしそうにフラスコを眺めた。
外では惑星同士のぶつかる音が響いているのだろうが、この家は防音されているから気にならない。
シャラシャラとした精霊の足音が、時たま耳に届く程度だ。
窓の方をちらっとみると小惑星同士が割と近場で爆発していた。
広がる衝撃波の波がカラフルに伸びている。
「アリさんとアリさんがごっつんこだな」
そう一人小さくこぼすと、彼が不思議そうな顔でこちらを見る。
「?」
「いや、昔いた星の話だよ」
忙しなかったな。
そう思い出すあの星も、通過地点に過ぎなかった。
今はここでフラスコを混ぜて、来る時を待っている。
そういや、彼はなんでいるんだっけ?
まぁいいか。いるんだから、いるんだろう。
私は新しいフラスコをとりに裏庭の木へ向かう。
《koedananafusiの独り言》紅茶を飲んでたら
紫の液体がゆらゆら揺らめくフラスコが頭の中に出てきたから、これはいいと思って書き出した。
物語を書くとき、特に1場面の場合はその場で考えてというか、場面の絵が浮かんでそれを言葉に落としていくのだけれど、他の人はショートショートと呼ばれるものをどうやって書いているんだろう。
私は頭の中のことを引っ張ってくるだけだから、お題が苦手だ。
お題がたまたまた記憶の中に思い出の欠片に引っかかれば書けるけど
それ以外は考えすぎて話しにならない。
今肺が動いてる事とか、明日の天気予報とか、どっかでは戦争とか、どっかでは結婚式とか、そういうの全部感知できないのと同じだと思う。
それだから感知できた頭の中の景色は
気分が良ければ形にしてやってもいいと思っている。
読んだ誰かの頭の中に星の欠片が一つでも紛れ込んだら、それは新しい宇宙の始まりかもしれないでしょう。
いいなと思ったら応援しよう!
