『29歳、今日から私が家長です。』
イ・スラによる『29歳、今日から私が家長です。』は、先日KBOOKラジオで紹介されていた一冊。著者が、今月開かれるKBOOKフェスティバルにも参加するとのことで、早速読んでみた。
イ・スラは、2018年に著作『日刊イ・スラ』が韓国で爆発的な人気作となった新鋭作家だとか。
本作『29歳…』は、日本では今年の4月に出版となった新作。
著者と同じ名前の主人公スラが、自ら出版社を立ち上げ、母を調理師、父を清掃夫として雇用し、三人で会社をきりもりする日々が綴られる。
社長でもあり、「家長女」でもあるスラ。
家長と社長が長女になったとき、どんな関係性がそこには生まれるのか。軽やかに、日常を織り交ぜながら物語られていく。
ときにはお互いの理解や敬意が足りなかったり、言葉が足りないこともある。
でも、互いに理解できないことがあるということを理解すること、常に互いを尊重することが、どんな関係でも大切であることが、父と母、友人たちとのやりとりや小さな出来事の中に、織り込まれて語られる。
従来の家父長制では軽んじられてきた女性の尊厳、男性たちに押し付けられてきた「強さ」。「家長女」になれば、簡単にそれらを飛び越えていけるという単純な話ではなく、模索しながらも新しい形を共に作っていく、その中で確認し合う互いへの愛を描いた物語。
一見新しい何かに思える題名の作品だけど、根源的で普遍的なものを語っているように思う。
男性が威張ってなくて、女性や子どもが対等に尊重される関係性って未来がある、そんなふうに思わせてくれる。
家事に追われて日々くたくたになっている私には、そっとなぐさめられるようなエピソードもあり、ぽろぽろ泣いて読んでしまった。
韓国では若手No.1の人気作家となった著者。
これからどんな作品を読めるのか楽しみだ。本作はドラマ化も決定したとか。読みながらドラマになったら面白そうだなと思ったいたから、そちらも楽しみ。
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