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中学生から知りたい パレスチナのこと

ガザの現状は、ますますひどくなる一方だ。
ほとんど毎日、イスラエルの爆撃により、何人が死亡という記事が新聞にのる。その一人ひとりが、どんな風に生き、どんな家族や友人がいて、どんな風に殺されたのか、記事だけではわからない。でもそれを想像しなければいけないと思う。目をそらせてはいけない。

去年10月に始まったイスラエルの戦闘を機に、パレスチナのことを考えるようになった。岡真理さんの『ガザとは何か』を読むまで、あまりにもパレスチナのことを知らなかったし、知ろうとしてこなかったし、考えてこなかったを思い知り、自分を恥じた。
本書は、同じく岡真理さん(現代アラブ文学,パレスチナ問題専門)、小山哲さん(西洋史、特にポーランド史専門)、藤原辰史さん(現代史、特に食と農の歴史専門)の三人の著者が、それぞれの研究分野から、パレスチナが現状に至るまでの歴史をひもといている。

本を通して強調されているのは、歴史の捉え方を見直すべき、という視点である。
世界の歴史を「西洋」「東洋」を別々に考えてきたことにより、そのつながりがみえなくなっていた、と著者自身の反省をふまえ、現代史を理解するために今必要なのは「グローバルヒストリー」であると語る。

また、アウシュビッツを「唯一無二」の「絶対悪」としてきたことにより、数多くある向き合うべき負の歴史について、日本をふくめあまりにも軽視されてきたのではないかということも問うている。
なぜドイツがイスラエルを擁護しつづけ、支援を続けているのか、パレスチナの現状を無視し続けているのかも、第二次世界大戦後の西ドイツの態度を知ると深くうなずける。
そしてイスラエルが反セム主義(反ダヤ人主義)を利用し、パレスチナを入植を正当化してきたことも明らかにされている。
食と農の歴史についても専門としてきた藤原さんの、現在も続く奴隷制についてのお話は、自分が何も考えずに衣食住を享受してきたことを反省させられる内容だった。
ナチスの蛮行がアウシュビッツにおけるユダヤ人が虐殺だけではなく、意図的にソ連軍やソ連の人々を飢餓状態にしたことなどが語られ、食、水による暴力がいかに残酷で非人道的な行為であるかを学ばされた。

まだまとめきれない部分も多くあるが、西洋美術史専門の若桑みどりさんが『イメージの歴史』に書いている内容とも深くつながる部分もあり、さらに学びが必要だ。

情報があふれ、わかりやすく印象的な言葉や映像に私たちはすぐに飛びついてしまう。
でもそれが本当なのか、その情報は何に基づいているのかをよく確認し、検証し、その上で自分の考えを築いていく必要がある。ずっと当たり前だとされてきたことも、そうではないかもしれないという視点も忘れてはいけない。
この日常からはすぐには見えてこない場所で、地獄のような毎日を強いられている人たちがいて、それを忘れないこと、考え続けること、現実から目をそらさないことが、私たちには求められている。たとえ、イスラエルの残虐行為を直接止める力がなくても、考えること、学ぶことは私たちにはできる。

本を読む度に自分の無知を恥じ,反省する日々。
でもきっとそれはずっと続くのだろう。

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