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#夏祭りとぼく:実話企画『顔…かい。。。』


あこはるかさんの企画:夏祭りにまつわる実話。
私の思い出夏祭り。。。始まり始まり

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あれは22歳の夏…大学を中退し、私は実家に身を寄せていた。
仕事を始め、毎日楽しく過ごしていたそんな8月の日。

私の実家は茨城県の水戸市。毎年、偕楽園から見下ろすところにある千波湖で花火があげられ、多くの人で賑わっていた。
私の家の住所は千波町…そう…まさに千波湖は私の裏庭的存在。

花火大会の日には七田家で恒例 父の自慢のお好み焼きが振舞われる。
お好み焼き屋さんにある鉄板テーブルが我が家にもあり、
父がそこで何十枚とお好み焼きを焼く。
我が家を含め5軒の家で行き止まりになるその場所に大きな空き地があり、
知る人ぞ知る花火大会への駐車場となる。
うちでパーティーがあるとざっと2,30人集まる七田家。
花火大会はより多くの4,50は少なくとも集まるくらいだ。

テーブルはあっという間におもたせ物でいっぱいになり、
皆でワイワイ 外で中で楽しむ時間。家からでも花火は見られたので、千波湖に出向く人もいれば テーブルいっぱいの食事をここぞとばかりに皿にとる人もいる。


そんな中…私は外で父のお好み焼きを頬張りながら座っていた。。。。


レノン

その長い胴体にぶら下がった耳。

レノンはお隣りさんのダックスフンド。
私が外に出る度にガラスをぶち破って突進してくる勢いで ぎゃわん!!と鳴きわめくレノンを 私はあまり好いてはいなかった。
動物好きの私にも「相性」があるのだと…そう気づいたのはレノンにあってからだ。
多分レノンも私を好いてはいなかった。
でもお互いにそれを分かっているから、無理して仲良くなろうともしなければ、出来るだけ干渉はしていなかった。


が、、、レノンがじーーーーっと私を見つめる。
可愛い顔ではなく、「お前かよ!!」ってな顔で。


皿に目を落とし、
仕方なく、
溜息をつきながら、
お好み焼きの豚肉を手に、
「これか?」
とレノンの目の前にぶら下げた…


次の瞬間…

レノンは豚肉に目もくれず、
私の顔めがけて大口を開けた。


顔面流血22歳女 お好み焼きまで血だらけ


レノンは見事に私の顔面ど真ん中に噛みついたのだ。

眉間のちょい脇、眉毛の始まる辺りに裂傷
鼻の筋に長く歯が這ってつけられた傷に
口元のすぐ上に 真っ黒な穴があけられた。

どの部位からも血がどばーっと出てきたのだ。


うっぎゃーーー!!!
嫁入り前の顔になにをするぅーーー!!!


周りにいた人は慌ててティシュだの
キッチンペーパーだの
首に巻いていた汗が染みたタオルなどを
ばっこばっこと私の顔に被せてきた。

家の中から出てきた母が傷を見てプルプルと震え、
お隣のおばちゃんが、ごめんねごめんね!!と連呼する。


おみゃー!!せっかく好意でお好み焼き分けてあげたのに
豚肉地面に落ちちゃったじゃん!!

それを聞いた父は 心配そうな顔で…

「でも苗子の顔の方が豚肉より旨そうだったんじゃないか?」


いや…違うだろパパ。。。


とにかく100m先にある私が生まれた病院…以前の「皆川産婦人科」であった「皆川整形外科」に歩いて行った。
私を取り上げてくれた先代の先生の息子さんがいまも整形外科をされているこの病院…風邪でも 筋肉痛でも 胃もたれでも…私はここに行っていた。
若先生は”飛んでいる先生”で大好きだ。

「なんだ?犬に顔噛まれたのか???」

全然心配していない。
むしろ笑いをこらえている。
ムッとすると

「わぁーかった、わぁーかった ちゃんと傷が残らない様に丁寧に縫ってやるから!!」

そう言って先生は血だらけの顔を拭いて縫合してくれた。


家に帰ると これでもかぁーという大勢の人が「大丈夫?」と声をかけてくれた…が、お好み焼きを焼く父は…

「あはははは!!!なんかお化けみたいだな!!」と大笑い。
隣にいたレノンの持ち主に悪い思いはさせたくないという父の想いは分かっていたから、「ハッピーハローウィン…」と言ってみた。

顔に4か所 ガーゼがテープでべたべた貼られ、顔の3/4がガーゼだった。
が、どうせ お嫁に行く予定もなかったし、傷があるから私を嫌いになる人なんて願い下げだし…まぁいっか。とさっき食べきれなかったお好み焼きにガブリついた。


母はまだ心配そうに 「女の子なのに…」と呟いた。
「どうせだったらブラックジャックみたいな傷の方がカッコいいのにね…」
そう言うと 母はムッとしながら「あんたはほんとに!!」と呆れていた。

しかーし!!!

「苗子…明日…会社のお神輿…だわよね?」


うをぉぉぉーーーー!!!忘れてた。

そう、花火大会に続いて地元では「黄門まつり」が開催される。
水戸駅の北口からずっと 地元の会社の神輿を担いだお祭りがある。
私の会社は「NTT DoCoMo 茨城支社」…茨城DoCoMoを総括する水戸市内でも大きな会社。私はそれに参加する予定だった。

「お顔がこうなっちゃったし…誰かに代わってもらいなさい」


とりあえず電話を入れると部長が
「犬に顔を噛まれた…のか?」とちょっと笑ってちょっと心配げに言ってくれた。とりあえず同期の男の子が代わりに担いでくれることになったのだが、どうにも腹の虫がおさまらない。。。。


縫った2箇所以外はガーゼを外し 鏡の中を覗き込むと、まぁ…あまり普通の顔と変わらない。。。

という事で次の日…神輿に声で声援参加をと駆け付けた。


私を見た会社の人たちが ぎょっ!!!として
居合わせた部長は…
「本当に…顔をがっつり噛まれたんだな…」
とぽつりと言った。

部長…

疑ってたんですか…?

(笑)



私の22歳の夏祭りの写真は…
ガーゼばっちりに うっ血する傷口…真っ黒な穴の開いた口元を
大きく横に引っ張りながら
神輿の前で笑う私が映っている。。。。



おわり。


PS:傷口は未だうっすらと残っている。が、この歳になると傷口の方が美しいと思えるようなものも沢山顔にできるものだ。
レノンはその後、病気により半身不随になり車いす生活となった。。。が、その後もずっと私を見るたびに元気よく台車を引きながらごつんと引き戸に体当たりをしていた。

もしかすると、父は間違っていなかったのかもしれない…

レノンにとって私は、

歩く肉

だったのではと ふとたまに思うのだ。



七田 苗子

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この企画です:):)14日までなので、是非是非 皆様の実話をお聞かせ下さい:):)

Geekさんはやっ!!!(笑)「寅さん」…ふふふ。

Marmaladeさんの「金魚さんごめんなさい」に…でもやりたいですよねぇと呟いてしまった私。ふふふ。

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