稀人ハンター川内イオさんからインタビューを受けてわかった“いいインタビュー”の魅力を3つ語ります
先日、大手ビジネスメディアで多数執筆するフリーライター川内イオさんのインタビューを受けるという貴重な体験をしました。
インタビューを受けた感想、それはインタビューの持つ奥深さとポテンシャルの高さでした。多くの人に体験してもらいたいと心から思いました。
理由は3つです。
一つひとつ解説します。
フリーライター川内イオさんとは?
本題に入る前に、今回のインタビューイー川内イオさんについて紹介します。
(※川内イオさんを以下「イオさん」と表記します)
プレジデント・オンラインやNewsPicksなど、大手ビジネスメディアなどで多数執筆し、たった1日で100万PVを叩き出したことがある方です。
何がすごいのかというと、テレビでも新聞でも知り得ないニッチな分野でよりよい世界を実現するために活動している人を取材し、その方を多くの人に周知すること。
ローカルでの活動をその枠で終わらせず、取材対象者の生き方や活動を深掘りし、ひとつのストーリーとして世界へと発信。「成功までにこんなデコボコな道のりがあったのか!私もなにかチャレンジしてみよう」と多くの人の心を打つのです。
また、イオさんの記事は約1万字前後のものが多い。このボリュームは動画や要約が主流の現代の流れとは真逆のスタイル。でも没頭させる構成や取材力は、他に類を見ないイオさんオリジナルのものです。「読む情熱大陸」だと例えられるのに納得です。
以下は、私が初めて出会ったイオさんの記事。喜怒哀楽の感情が忙しく「おもしろい!の連続。読み終わっても滝のような涙が止まりませんでした。ぜひ読んでみてください。
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そんなイオさんが2023年3月に「稀人ハンタースクール」を開講するというので、思い切って受講を決めました。
内容は、週1全7回の講義に加え、5つくらいの特典。
特典のひとつにあったのが「川内イオからインタビューを受ける権利」です。
インタビューのノウハウを学ぶのであれば、まずは受けてみよ、ということです。
キャリアの長いフリーライターさんからインタビューを受けるという貴重な体験です。インタビューを受けながら、質問の内容、相槌、間合いなどなど、必死に盗むつもりでした。
でも、ダメでした。最高のインタビューというのはそんなことはさせてくれません。
話すことに没入させてくれるのです。
約1時間のインタビューの後、私の心が軽やかになりました。コンプレックスの塊だった私の人生を、自分で肯定できるようになったのです。
この経験を経てこう感じました。
インタビューはメディアに掲載されるような特別な一部の誰かのものではない。もっと普通の人、陰日向でひっそりと自分の人生を生きる人たちにも体験してほしいと。
次章からの本題で紹介していきます。
1.過去の自分の言動や選択を見つめ直すことで、自分を肯定できる
イオさんのインタビューの特徴として、人生を丁寧に深掘りすることが挙げられます。
取材対象者の今の活動の源泉を知るため、生まれてから今に至るまで何が起こったのか、それをどう考え、乗り越えてきたのか、一つひとつのエピソードを掘っていきます。
私の場合、仕事では住むところも含めて幾度となく変え、プライベートでは12年間に渡る実兄からのいじめ、恋愛依存の20代、結婚からの離婚、つきまとい被害など、“谷”ばかりで人様に自慢できるような経歴など何ひとつありません。
つらい体験のほうがコントラストが強く記憶に残っているものですが、イオさんは当時何が好きだったのか、家族や友人がどう接してくれたのかなど、周辺についても言及します。
私の例でいうと、私は兄にいじめを受けていたことで人一倍正義感が強くなり、小学生時代はよく1人で過ごしていました。校舎裏の花壇に行き、草花や虫を観察し話しかけて生きる元気をもらっていました。振り返るとその頃から自然が好きでした。
理由は、自然のものはただ己を生きているからです。草花や虫は生きるために生存争いはするけれど、お互いのやったことや見た目を罵り合ったりしません。誰のせいにするでもなく自分たちで形を変え、生き抜いています。今でもその姿を見ると勇気づけられます。
また、仕事を転々とした理由は「営業後に社員が吸いまくるタバコの煙で体調を崩した」「お客様を結果的にだますような不誠実な商品なんて売れない」「受注のためならグレーゾーンOKな会社」などなど。
職を変えたのは、自分の中の正義感があったから。「野内さんは長いものに巻かれない強さがあるよね」とのコメントをいただき、あのときの決断は間違っていなかったんだと改めて認めることができました。
2.過去と今がつながっていることに気づける
幼少期から今に至るまでのことを話していると、驚くほど、点と点がつながっていることに気づきました。
自然が好きだったから今田舎に住んでいるし、人間観察が好きだから取材ライターをしている。
人格否定されるなどつらい子ども時代を過ごしてきたから、我が子たちには変な価値観に惑わされることなく、胸を張って好きなことを好きと言える環境をつくろうと努力している。
家族が、怒りや不機嫌で人をコントロールするのなら、そのデメリットをきちんと伝える。あきらめずに伝え続ける。
これをあきらめていた子どもの頃の私。過去深く傷ついた自分を救うために、今懸命に家族間コミュニケーションに踏ん張っているのかもしれません。
3.人生で大事にしている「核となる部分」に気づける
職を転々としていた理由が「自身の中の正義感」だったという他、家族関係では「忍耐」「あきらめない」という執念のようなものがあります。
「家族みんなが笑顔で過ごしたい」。
家族という最小単位のコミュニティで実現できれば、社会へも波紋が広がると信じています。現実問題、男尊女卑や年功序列など古い価値観がナチュラルに根強い人が、家族や先生など周りにいる。
その凝り固まった歪んだ価値観を、あの手この手で時間をかけて「●●だからおかしいんだよ」と伝え続けます。どんなふうにすれば伝わるか、頭を使いながら私なりにコミュニケーションに努めています。
イオさんは口頭でこんな言葉をくださいました。
インタビュー後のイオさんのツイート
いいインタビューは、対等な関係性から生まれる
カウンセリングとか傾聴とかと同じでは?と感じる人もいるかもしれません。
それは違います。トラウマの原因を突き止めたりはしないし、ただ寄り添って話を受け入れ聞き続けることでもない。
インタビューは、インタビューイーが核となる部分を引き出すために、表情や身振り手振りを見逃さないし、その場その場でかける質問を変えます。
そう、いいインタビューにするために大切なのは、インタビューイーが気持ちよく話せるように場を整え、和ませ、切り込みにくい話題にナチュラルに質問を重ねること。
技術が必要です。
「あっ、つい話しちゃった」「なんでこんなプライベートなこと話しちゃったんだろう」となるよう、対等な関係性づくりが大切なんです。
対等だからこそ、話せることがある。
インタビュアーが肩ひじ張ってないからこそ、するすると出てくるものがある。
質問の答えを急かさず待つ。その人のペースに委ねる。だから記憶の泉に沈んでいたものを湧き上がらせることができる。
インタビューは、とても奥深いです。もっとたくさんの人に人生を振り返ってもらいたい。自分の人生はいいものなんだと全身で感じて肯定してもらいたい。
一人ひとりが健やかな状態で自信にみなぎれば、よりよい社会につながっていくはずだから。