
自分をさがす旅 part12 学校
あなたは自分の母校を卒業して良かったと感じていますか?
私の高校は稀な学校だ。それは定時制の学校だった。しかし、定時制と聞くと夜間だけのように思うがそうではない。全日を3分割したような学校で、午前部・午後部・夜間部となった3部制スタイルだった。
大学のように授業は自由に選べ単位性のため、1年間に修得する単位数を越えるように計算するのはパズルのようで楽しい。定時制は基本的に4年での卒業を謳っているが、この学校は3年で卒業することが可能なのだ。4時間×4年間の単位数は四修制。6時間×3年間の単位数は三修制となる。
自分の時間帯と他学部の時間帯を修得することで、3年で卒業できる仕組みだ。この学校の面白いところは、偏差値が不明だということ。
不明にすることは不登校生からは安心なのだ。敢えて出さないことで得られるメリットもある。間違えて欲しくないのは、偏差値がないからと言って馬鹿な学生ばっかりだというわけではない。もちろん、偏差値が高い学生も居て卒業後東大に進む生徒さんもいる。
敷居を見えなくすることで、目標のライフスタイルがはっきりすることを目的としている。
担任やクラスはあるが、基本大学とスタイルが変わらずただの形だけだった。その為、苦手なら自由に選ぶことも他に価値を見出すこともできる。学科の先生や学年の先生は多数いるため、自分の必要とする先生を作る自由もあり、縛られる苦痛感もない。
中には、通常の学校に居そうな教師も居て自分のトラウマに引っ張られることもある。物は考えような気がする。わたしはメンタルが弱く潰れてしまい、不登校生の時期を作った結果、3年制で卒業が難しくなり4年制で卒業することに切り替えた。
部活動も充実しているし、少なからず行事もある。修学旅行がないのは残念だが、学校という仕組みを。勉強を。やり直すなら持ってこいな学校だ。
学校嫌いな子・不登校生が8割通うというだけあっていじめはもちろんないし、制服という概念も低い為、自分の好きな格好で通える。生徒の意思を尊重する姿勢を学校全体で作っているからこそ、不登校生でも期待を抱きやすい「学生生活をやり直したい」と高められる。
不登校生になりたくてなっている生徒はいないでしょう。わたしもその1人だ。何かをきっかけに社会から閉ざされたのなら、学校という新しいきっかけのもとやり直すことだって可能なはずだ。
この学校は、通信制ではなく一般的全日制と変わらなく通学する。私たち学生の時は、この仕組みを構築しているのは、千葉県で2校だけだった。
今は、定時制という枠組みとは決裂した存在を示す為、3部制という学校として広めている。年々、時間帯を有効活用できると受験者が増えている。こないだ聞いたら、私が学生の時より倍率が4倍に増えていた。
アマチュアボクシングの選手や社会人、年配の方や様々な方が新しい概念のもと、学生を送っている。人間関係を見つめ直すのに持ってこいな学校だと私は思う。
卒業後も、教師たちとは交友関係をもち、たまに食事会を開く。卒業時に、学年主任の先生と「同窓会」をする約束をした。そして、卒業した次の年、約束の同窓会を開いた。5名の教師たちと生徒20人の中規模の食事会は大成功した。二次会も開催し、楽しい時間を過ごした。
そして、約束を果たすのを見届けたかのように、学年主任はこの世を去った。口癖はいつも「松南で初めての同窓会は楽しくて嬉しかった」と溢していたそうだ。
お通夜に参加した時、入り口に同窓会の写真が貼ってあり、笑顔が絶えない学年主任と生徒の顔が映っていた。葬式の挨拶を済ませ、先生の顔を見た時、私は笑顔が溢れた。「本当に叶えることが出来て良かった」と言葉が漏れ、同級生たちの涙は止まり、同窓会の話し声が生まれた。
そっと、先生の顔を見たら笑っているように見えた。「あ、安らかに眠れなくなっちゃったね」と思った。
こんな交友関係が生まれる学校はあまりないだろう。私はこの母校を慕っているし、同じ不登校生の進路相談として、よく教師達と出張説明会に出向いて体験を語った。不登校のみんなが前進できる喜びに触れる瞬間をいつも応援する度、凄く良い体験が出来たんだと実感する。
今、こうして笑っているのは高校のおかげだと思っている。私はこの学校が大好きだ。
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