#2 共通項
昨年結婚した夫との共通点はいくつかあるが、「匂い」に関する好きが似ていることは嬉しかった。
とはいえ、お互い特にこだわりがあるわけではない。ブランドの香水やルームフレグランスを使っているということでもない。彼が使っているシャンプーの匂いが私の好みだったり、ドラッグストアで新しく柔軟剤を探すときに同じものを選んだり。そういうレベルなんだけど。
だけど、日々の生活の中で自然と纏うことになる「落ち着く匂い」が同じということは、違和感のない心安らぐ時間を過ごせている(=ストレスがない)ということで、一緒に暮らしていく上では意外と侮れないポイントなのかもしれない。
お隣から風に流されて洗濯物のイイ匂いがやってきたとして、または、道ですれ違ったナイスガイから洗練された残り香をプレゼントされたとして。その一瞬を広い空間の中では楽しめるかもしれないが、同じ屋根の下で毎日暮らすとなると、それは別の話になるだろう。風に消えていくのなら多少甘ったるくても問題ないが、窓を閉め切った部屋の中で自分では選ばない強すぎる匂いに侵されると、私はしんどいと感じてしまう。
私も彼も「なんでもいいよ」とすぐに言う。
初めは気にしていなかったが、その「なんでも」の中に入っていない「もともと選択肢にないもの」が合致しているなと思う。もしかすると、「そんな保守的じゃ日々の刺激がないじゃないか」と言われるかもしれない。だがその刺激は友人や仕事仲間、道ゆく人々からでも充分に得られるのではないか。家庭では、できるだけ穏やかに暮らしたい。そして、不意に訪れるだろうお互いの「新たな一面」を、できる限りフラットに受け止めて、少しずつ色を変化させていきたい。