【モノローグ】透明人間
*趣味で作ったモノローグです。演劇系の部活時代に作っていたものを思い出しながら書きました。
【透明人間】
「私が本当に透明だったらいいのに。」
1週間、誰とも話をしなかった帰り道のこと、ふとそう思った。
今まで、 死んでしまおうか と思ったことは何度もある。
だけど私は 死んで私を無視するあの子たちに復讐したいわけでも、気付かないふりをする両親に後悔をさせたいわけでもなくて…
ただ、消えてしまいたい。こんな身体が無ければ、無視されていることに気づかずにいられるのに。
こんな身体があるのに、誰に触れるわけでもなく、誰にも触れられないのなら。
身体なんて、いらない、いらない。
そう思って気が付くと、私は透明になっていた。
はじめは、なぜかわからないけれど、今まで縛り付けられていた物から解放されたような、なんというか、そういう高揚感におそわれて、柄にもなくはしゃいで、いろいろなところにいった。映画や、遊園地、綺麗な景色をみた。
だけど少しして、 私は気づいてしまったのだ。
何も楽しくない。何も感じられない。
なんてったって私には体がないのだ。私でさえ、自分の身体を認識することはできない。だからだろうか。大地を踏みしめる感覚もない。温度もない。ただ、無味乾燥な音付きの映像が動き、それについて思考しているだけ。…本当に私は「居る」のだろうか…
少しでも思考が止まれば、自分が失われていくような、言いようもない恐怖に襲われる。もう、私の存在を証明するものは何もないのだ。
ああ、本当にばかなことを祈ったものだ。身体だけなくしても、消えることなどできなかったじゃないか。何も変わっていない。…寂しい、寂しい。
こんなことが永遠に続くのか?もう嫌だ、耐えられない。助けてくれ、誰か私を見てくれ!
…ああそうだ、いっそのこと、こんな思考すら、いらない。いらない。