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利尻島で見つけた在り方〜溢れる選択肢に溺れない、自分に還る夢の浮島〜


こんな生活にあこがれて出てきたけど、、、。
転職したとして、次のステップはどうしよう。
あっちにチャレンジしてみたいけど、まずはここで頑張ってキャリアを積んで、、、!
あの子は結婚して、あの子はこんな働き方をしていて、あの子は、、、。

モノや情報に溢れ、働き方も多様化してきた現代。多種多様なロールモデル、表現の場となるサービスやその範疇を広げる制度、リモートワークやフリーランス層の増加から場所や時間に捉われない働き方の浸透など、未来の選択の幅はここ数年で格段に広がっている。

しかし、そんな色鮮やかに広がりを見せる社会の片隅で、身体や心がきゅっと縮こまるような、そんな感覚を覚えている人もいるのではないだろうか。
そう思うのは、少し前のわたしがそうだったから。

どこに向かうのが正解か、正しいのか。
そのためにどれを選ぶのが最短か、効率的か。
あれもいいし、これもいい。
でも結局自分は何がしたいんだろう。

カラフルな選択肢に目が眩み、今、自分が立っている場所がどこかもわかっていないまま、ハムスターが回し車を回すように、ひたすら走り続けている...。
そんな現状に気づいてないのか、気づかぬふりをしているのか、ただなんとなく違和感があることだけは確かだった。



少し前、と言った。
当時、以下に書いたような内容に気づいてから、自分のいる場所がぼんやりと見えてきていた感覚はあった。

https://note.com/namishy/n/nddc674f16e76

、、、のだが、今回ゴールデンウィークにとある島を訪れたことにより、まだまだ自分の足元すら見えていなかったことを実感した。

訪れた島の名は、利尻島。
豊かな自然に囲まれた、穏やかな町。しかし、決して便利とは言えない、制限がある中での暮らし。
そんな豊かさと制限が共存しているからこそ根付いた生活や人々のもつ空気感には、未来に進む少し前、今を見つめるヒントがたくさん詰まっている気がした。

「夢の浮島」とも呼ばれる、利尻島。
少し、ご紹介できたらと思う。

夢の浮島、利尻島。


北海道の北西部、稚内市から西に約50kmに位置するのが利尻島。
休火山である"利尻富士"と呼ばれる利尻山を中心に、ほぼ円の形をした離島で、昆布やウニなどの海産物が有名な地だ。
「利尻町」「利尻富士町」の2つの町からなり、人口はあわせて約5000人。1年ほど島で暮らすと、通る車を見て誰かがわかるほどだという。
春には珍しい高山植物が各所で見受けられたり、夏にはウニ採り体験や登山、SUP、冬はウィンタースポーツといった自然そのものを楽しめるアクティビティが盛んだ。
隣にある礼文島と両島を訪れる人も多いそう。
利尻富士町HP: https://www.town.rishirifuji.hokkaido.jp/rishirifuji/
利尻島観光ポータルサイト: https://www.rishiri-plus.jp

北海道・東北地方の人や、ウィンタースポーツが好きな人には一度は訪れたい場所として有名なようだが、人生のほとんどを関西で過ごし(今は関東在住)、北海道は観光都市をちょこっと訪れた程度のわたしには、"利尻"という名前にもなかなか触れる機会がなかった。
そんな、なんの縁(ゆかり)もなかったわたしがここに来た理由は、大学時代の友人が移住したことがきっかけ。彼女は2つある町のうちの1つ、利尻富士町で地域おこし協力隊をしている。定期的に連絡を取り合っていた彼女から聞く話は、都心ではもちろん、島出身のわたしでも見聞きしたことのないこの島ならではの生活リズムや社会性のようなものがあると感じ、とても魅力的だった。そして、その生活を体験してみたいと思っていた矢先、このゴールデンウィークにタイミングが重なり空を飛ぶ運びとなった。

利尻島までの経路は、
羽田空港→新千歳空港へ(約1時間)、その後丘珠空港という別の空港までバスと徒歩(電車の方が確実に楽だが、高かったので)で移動し、そして丘珠空港→利尻空港(約1時間)といった流れで向かった。
※羽田空港から稚内空港までの便もあり、そこからフェリーも出ているそう。離島で乗り換えは必須なので、違う乗り物に乗るのもよかったなと思う。

丘珠空港から利尻空港が1日2便しかないため(時期にもよる)、間の移動も含めて羽田空港出発から考えて7-8時間ぐらいだっただろうか。
長旅ではあったが、その分到着した時の達成感は大きかった。到着した日は島の中でも天候がいい日だったようで、利尻富士がよく見え、飛行機を降りた直後すぐケータイを出してカメラに収めた。

でっかい!!



4月末〜5月頭の利尻島の平均気温は6度前後。関東での気温を考え、厚めのニットやヒートテック、重めのコートなど、比較的真冬の服装を準備していったのだが、予想よりも温かかった。体感温度的には2桁あってもいいくらい。トレイルコースや観光スポットでもあるペシ岬を歩いていても、早春の植物が花開いていて春を感じた。

ところが、ふと目を横にやると、白い塊が、、、、!

ここは観光スポットでもある「甘露泉水」の近く。この水も冷たくて甘かった!


そう、これは雪の塊。冬に降り積もった雪がまだ溶け切っていないのだとか。5月に雪!?と驚きはしたが、生い茂った植物と雪を同時に見ることなど早々ない。こんなコラボレーションを楽しめるのもここならではだと、その嬉しさにここに来るまでかかった時間など忘れていた。
※ちなみに、服装の準備は温かいとはいえ、コートを着るor着ないで調整できるくらいがちょうどいいかもしれない。太陽の日差しがない日は寒かった。島の人の中には、もう半袖の人もいたけど。笑

そんな風に町のところどころに雪が残る5月初旬は、まだ利尻山の登山も難しいそうだ。ウニが採れるのも6〜9月。ウィンタースポーツもほぼシーズンオフ、、、と、島の象徴的なものを体験するにはなかなか中途半端な時期にわたしは訪れていた。


これらができないとなると、いつも予定を詰め込みガチなわたしとしては、どうやってこの期間を満たそうかと躍起になる。しかし、今回はそんな焦りは一切感じなかったのだ。

きっとそれは、この島の人たちの空気に触れることができたから。
自然の移り変わりの中でも雄大な利尻富士のようにどっしりと自然体で生きる、そんな人たちに。

制限からみえる、ほんとうの自分。


「ここにいると、
   自然には敵わないって感じるんだよね~」

わたしが利尻島に来るきっかけになった彼女が放った印象的な言葉だった。
観光業に関心が強く興味がなくはなかっただろうが、"自然"について取り立てて話すタイプでもなかったので、その言葉を聞いて少し驚いた。
そして、同時に、ここに移り住んだ彼女の中でナニカ変化があったんだなと思った。

10数年前まで利尻島では、朝、旗が上がり、その旗を見て漁師の人たちは何をとるのか決めていたという。
その日の風の強さや波の高さなどで、漁に出ていいか判断していたのだとか。
現在は旗は上がらないが、町に放送が流れるようになっている。

風の強さなんて、人間の手では変えられない。
ましてや波の高さなんてなおさら。

だから、漁ができない時もあれば、船や飛行機が運航せず、島外から物が入ってこなくなる時もあるらしい。
完全に孤立してしまうことがあるのだ。
それでもそれはしょうがないと、身に付いてきた感覚で備えや蓄えをしたらあとはときが来るのを待つ、という。

この島の人たちは、自然に抗わず、ただ粛々とその日その日を生きているように感じた。
それはまるで、自身も自然の一部かのように。

自然の中で生きると、必然的に発生してくる
「制限」。

自然があるから制限がある。
でも、制限があるから自然でいられる。

無理をしない、肩ひじ張らない、背伸びをしない。
そんな自然体な島の人たちを見て、今も自分が "こう在るべき" や "常識" に縛られていたことに気づいた。
足元が見えていなかったのは、この "こう在るべき" や "常識" がモヤと化していたのかもしれない、、、。
ここにいる間で、その縛っていた紐が緩まるようになんだか力が抜けていった。
そして、今、以前よりは少し、何をしててもしていなくても、どんな自分でも「これが今のわたし」と思える自分がいる。
足元がはっきり見えた、そんな気がした。

ほんと、自然には敵わないなぁ。



選択できること・選択肢が多いことは、
自由の象徴だ。
自由があることは、希望でもある。

ただその希望の明るさに、目が眩むことだってある。

ここまで読んでくれたあなたがもし、冒頭のような不安に襲われ心がきゅっと苦しくなっているのなら、ぜひ一度、この島を訪れてみてほしい。

選択肢であふれる大海原よりも
限られた選択肢の波に浮いていたほうが
行きたい場所に漂着しやすいのかもしれない。

そんなことも思ったりした利尻島だった。

小さな一歩としての「ちょっと暮らし」

実は、今回、「ちょっと暮らし」という制度を活用させていただき、体験移住として利尻島に来ていた。これは各自治体が行っているもので、移住を決める前にまずは北海道内の気になる地域に体験滞在し、地域の自然や生活環境、受け入れ体制などを自分の目で確かめられるといった制度だ。詳しくは一般社団法人の北海道移住交流促進協議会のサイトにまとめられている。(下記参照)
参照:https://www.kuraso-hokkaido.com/experience/shortstay.html

わたしは友人がいるというのが大きな理由で利尻島を選んだが、そのほかにも様々な地域で行われているようで、北海道ってこんなにたくさん地域があるの!?とびっくり。町によって募集期間や条件などは異なるようだが、基本は宿泊施設が用意されていて、そこに6日以上のステイが条件で、移住を体験できる、といったところだろうか。
わたしが泊った宿泊施設は設備も整っていて、さらに目の前が海!立地もよく、1,2週間暮らすにはとても快適だった。

波の音や潮の香りが心地よい、宿泊施設。



それぐらい各自治体が力を入れているこの「ちょっと暮らし」の目的は、「観光」ではなく「移住」。
わたしも1週間いたからこそ、その町の表層を見て終わるのではなく、人々の「暮らし」も見ることができたのだと思う。

そして「暮らし」について知れたのは、やはり人との関わりを持てたことが大きい。
わたしは、出会った人の多くは島にいる友人がつないでくれたものの、飲みの場で聞こえてくる会話からその人たちの暮らしが見えてくることもあれば、見ない顔だと話しかけてもらえて仲良くなるパターンもある。
一人でいるときもお店の人にあえて質問してみたり、何か作業してる地元の人らしき人に話しかけてみたりすると、みなさん気さくにお話ししてくださった。ワカメ干してるおじいちゃんと20分くらい立ち話した。

この島でずっと漁師として生きてきたというおじいちゃん。「生活が仕事だ」と言っていた。


暮らしを知るなら、見知らぬ人にも敢えて話しかけてみることをお勧めしたい。

、、、と、こんなことを言いながらも、わたしが滞在したのは休日のたったの1週間に過ぎない。
お仕事ありきの暮らしも知らなければ、冬の厳しさも知らない。
本当の意味で暮らしを見た、知ったといえるには程遠いけれど、でも、まさにそれを「体験」することはできたと思う。
ちょっと暮らしの過ごし方として、ワーケーションやシーズンステイという形でもよく使われているらしい。
今度は形を変えて、さらに長期で、体験的に移住してみたいなと思った。

頑張らなきゃ!自分が変わらなきゃ!
そんな風に現状が変わらないのは自分の気持ちの問題だと捉えている人もいるかもしれないが、案外環境が変わると自分の心持も変わったりするものだということも今回感じたことの一つだ。大きく拠点を変えてしまうというのは勇気がいるけれど、まずは短期間だけでも環境を変えてみると気持ちも変わるかもしれない。そんな時にもこの「ちょっと暮らし」はおすすめの制度だと思った。気になる人は、ぜひ自分に合いそうな地域を探してみてほしい。


滞在途中、友人が島で取れる海産物メインのBBQをしてくれた。ずっと美味しいしか言えず語彙力皆無だった。笑

友人宅で開いてもらったBBQ。ホタテ、アワビ、タコ、毛ガニ、ニシン。贅沢すぎた、、、。(写真の魚はホッケ。)


こちらは友人(&友人の彼)が作ってくれたお料理たち。ホッケのかまぼこ作りは別で体験もできるそう!めちゃくちゃ美味しかった!

ただウニ食べられなかったのは悔やまれる!笑
(利尻島のウニは、利尻昆布を栄養にしているので嫌いの人でもここのウニは食べらるそう!!)
次こそウニ!

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