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読書感想『差別のない社会をつくるインクルーシブ教育』野口晃菜・喜多一馬 編著

 『差別のない社会をつくるインクルーシブ教育』
野口晃菜 喜多一馬 編著
学事出版
2022年10月26日 発行


私の認識が甘かった。知らない事が多いと気づかされた貴重な本だ。


「インクルーシブ教育」と聞くと、障害のある子どものみが対象であると思われるかもしれませんが、その対象はすべての子どもです。P。18
 虐待されている子ども・労働やケアをせざるを得ない状況にある子ども・宗教第二世の子ども・難民の子ども・性的マイノリティの子ども・障害や病気のある子ども・不登校状態にある子ども・加害者の子ども P19

そこでがつんとやられて、まずはマジョリティーというものを考えさせられる。マジョリティ、マイノリティという区別が差別を生むのだ。ここでは駅での不便さが例にあげられていた。私はもちろん、駅にエレベーターがなくても何の問題もない。そこに目を向けていないかった。当たり前すぎたからだ。それをマジョリティ特権という。

読み進めていくうちに、不登校の子どもも排除されていると知った。
2023年度の小中学生における不登校の数は、全国で34万6482人(文部科学省の調査)である。年々増加しているのは、不登校に対し、社会の意識が変わり受け入れられるようになった事、学びの多様性や不登校を問題行動ではないと宣言した「教育機会確保法」の影響もあると考えれる。しかしながら、学校に適応できない児童・生徒に対して、エクスクルーシブ(排除)が学校現場で起こっているのかもしれないと予想される。

さまざまな当事者の方の体験談に心を痛め、また励まされる。登場する当事者は、それを前向きにとらえ、乗り越えてこられたからだ。

さらに教育現場での試みも語られており(語るというのがふさわしいくらい自然と頭に入ってくる)教師の方々の前例をみない取り組みを知る事ができた。

インクルーシブ教育は無理じゃないかとか特別支援学校で手厚い支援があった方がいいのではと感じていた。しかし当事者の方々の話を聞いて、インクルーシブの社会は必要だと思った。そのための教育だ。教育はあくまで教育でそれが完成形ではない。

まずは知る事、そして語ること。発信する事も大切だ。最初に記したようにすべての子どもが対象なのだ。すべての保護者が読むべき本であると言えるだろう。


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