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恋は遠い日の花火

 50を過ぎた頃からか、急激に癒しを求める様になった。食べ物も、音楽も、本も、韓国ドラマも、人生をゆったり味わう様なものを好む様になった。旅先もゆったり散歩をするような旅がしたい。

 私にとって恋のイメージは、刺激的で情熱的。実際「この人だ」と思ったら、猪突猛進。自分から掴みにいくタイプだった。心の中がその人でいっぱいになるし、自分の予定もその人との予定中心に回っていく感じ。ワクワクが楽しい分、プンプンもムカムカもある。もどかしさもいっぱいで心が忙しい。

 若い頃、今の私くらいの年齢の俳優さんが出ているCMがあって、そのコピーが「恋は遠い日の花火ではない」だった。それを見ながらぼんやりと「こんなに大人になっても恋がしたいのか」と思っていた。こんなに膨大なエネルギーが必要な恋をいつか卒業できると思っていた私にとって、それはちょっとした絶望だった。

 今、中年になった私にとって「恋は遠い日の花火」だ。
20年以上前に恋をして、今は一緒に暮らす人のことをとても愛おしく思っているけれど、これは恋とは違う。ワクワクではないけれど、温泉に浸かった時の様な「はぁ〜」っと温まる様な安心感に包まれている。この20年の中で、お互い譲ることも許すことも上手になった。プンプンもムカムカもほぼない。刺激的ではないけれど、私は恋に刺激を求めていたのではなくて、恋の先にあるこの安心感が欲しかったのだと思う。

 私は今、安らぐ人のそばで、しっとりと過ごしている。今の自分のことを、自分史上一番気に入っている。あの時、泣いて笑って激しく恋をしていた私に、「その先にあなたが想像もできないくらい温かな安心感がちゃんとあるよ」とそっと教えてあげたい。


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なみお
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