学ぶべきこと
私は小さな英語教室を運営する一英語講師です。
毎日教室で子どもたちと会います。その子どもたちとは幼児から中学生までの間の長いお付き合いです。そして数校の小学校に英語の指導に行っています。そこではほんの短いお付き合いの皆さん100名以上とご一緒します。
お付き合いが長くても短くても、一回のレッスンで一人一人のことを自分の可能な限りの吸収力で吸い込もうとします。その子の顔、声、だけでなく声の大きさ、笑いのツボ、興味、今日の気分...普段は注意散漫な性格ですが、ここにだけ神経を集中させます。
そんな風に子どもたちを見てきて思ったことは、子ども時代に学ぶべきことは決まっていてそれは「信頼関係を築くこと」。たった一回の授業でも一度に30名以上の子どもたちを見て一人一人と向き合おうと必死になる。その中で子どもたちが心を溶かして打ち解けてくれる。私にとっては、それが大事。それしか必要ない。
心からこの人信頼出来る、と思ってもらえたら、私の願い事は聞き入れられる。言葉が飛び交うクラス。一人一人の声を拾いながらも、発音練習の時には一旦静寂が必要。「聴くため」に。
今から発音を聞いてもらう。だから、まず聴いてほしい。伝えるとクラスが静まり返る。そこに小言は要らないし、誰かを個別で責めることも要らない。信頼出来る人の言うことなら聞いてみようか、という気持ちで応える。
この繰り返し。
もちろん、すぐには聞き入れられない心の壁の高さを感じることもある。そんな時は子どもたちの心の壁を根気よく壊していく。時間オーバーでそれが叶わなかった経験もある。でも、それでも最後まで子どもたちを信頼した。子どもたちがいつかこの延長線上のどこかで私の信頼を思い出してくれたらいい、そう願って。
学校の先生は多くの生徒を時間内に整った形にしないといけない、というミッションがある。家庭では忙しい中でこれとこれだけはさせないと、というミッションがあるかも知れない。その中で時には間違った伝え方で罵倒されたり、人格を否定されたりする子どもたちが心の傷を負う。その傷から自分を守るように、子どもたちは心の壁を高く高く築いていく。
私に出来ることは、その壁の向こうに話しかけること。人生の中でたった数秒すれ違うような存在だけど、あなたのことを知りたい。あなたを笑わせたい、一緒に笑いたい。あなたがどんな時でも、どんな子でも大好きだよ。とメッセージを送り続ける人でありたい。
そんな人間関係こそ、子どもたちが「学ぶべきこと」だと思うから。