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【翻訳】家賃ストライキ:5つの要求(あるいは5つの行動)

原文:CrimethInc.  podcast「Ex-Worker」#75:Rent Strike! より抜粋 
参照:5 demands global

【訳者より】これまでアメリカの家賃ストライキの「道具箱」を何回かに分けて紹介してきました。しかし、じっさい家賃ストライキで要求されているのが家賃の減免だけかというとそんなことはなく、以下に紹介するように広範な要求の枠組みが共有されているようです。とくに監獄の人権問題への言及は、国家というシステムそれ自体に反対するならばとても重要なポイントだと思います。今回は「5つの要求」を紹介するだけではなく、これらの要求に飽き足らずさらに踏み込んだ「5つの行動」を提起しているCrimethInc.のpodcast「Ex-Worker」から、内容を一部抜粋して紹介します。

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クララ:さて、全米で家賃ストライキを組織する人たちは、どんなふうにその行動の枠組みをつくっているのでしょうか?つぎに紹介するのは広い範囲のグループから提出されている「5つの要求」です。これを見れば、今何が危機に瀕しているのか、私たちの多くが何を求めて闘っているのかがわかるでしょう。ただし、これらの要求はネット上で多くの支持を得ているので、私たちはこれに批判的な仕方で参加しようと思います。

1.無料の医療を
あまりにも長い間、私たちは突然何かが起こって医療費の借金地獄に陥るという可能性に戦々恐々としながら過ごしてきた。医療保険が雇用と結びついているかぎり、今回首を切られた何百もの人々はパンデミックの最中に医療ケアへのアクセスを失う。私たちは、あらゆる人々が検査と治療と医療ケアを無料で受けられるよう、要求する。

2.働かせるな
多くの人が、病気になっても働くことを余儀なくされており、危険で不衛生な環境が広がっている。フード・スタンプと有給病気休暇をすみやかに保障することで、COVID-19の感染拡大を飛躍的に抑えることができるだろう。社会のライフラインを維持するのに不可欠な労働の分野においては、労働者とその家族のための厳しい防護策が絶対に必要である。

3.支払、借金を無くせ
借金返済のための安定した雇用のない人々に対して(支払いの継続を)求めることは、何百万人もの人々の生存よりも利益を優先するということだ。多くの人が住まいを維持するか、家族を食べさせるかの選択を迫られることになる。家賃、住宅ローン、光熱費、そして借金返済なども、全員が自立できるようになるまでは絶対に取り消してもらわなければならない。

4.囚人を解放しろ
拘置所、刑務所、移民収容所では、人々が不衛生な環境で寿司詰めにされており、感染拡大の主要な媒介となっている。私たちはすべての囚人と収容センターの移民をいますぐ解放するよう要求する。さもなければ、彼らにとって収容はCOVID-19による死刑宣告を意味することになる。

5.すべての人に住まいを
アメリカには1700万もの空き家がある。これは、住居を失いCOVID-19になんの用意もなく晒され、更なる感染拡大につながる環境で生活する50万人を収容するのには十分な量である。私たちは、空き家を解放し、住まいを必要とするすべての人に使えるようにすることを要求する。

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アラニス:オッケー、けっこう良さそうな感じだし、あんまり「いかにもCrimethInc.」な言い方はしたくないけどさ…でも、私たちって「要求」ってことそれ自体に反対じゃなかったっけ。つまり、今まで私たちがやってきた批判って、ここでも当てはまらないかな? これらの要求は私たちの敵側の機関や主体を中心に据えているし、多様な闘いを同質的な目標と最大公約数に切り縮めてしまっているし、複雑な問題を単純化してしまっているし、運動の可能性の範囲を限定してしまっているし…

クララ:うんうん、分かる。

アラニス:つまりさ、なにかを要求する、というときには、私は賃金経済や土地所有制度そのものを永久に終わらせることを求めてるんだよ。ただ「全員が自立できるようになるまでは」家賃や借金の支払いを凍結するってだけじゃなくてさ。

クララ:まったく同意。私が思うに、これって国家とか不動産所有者とかへの要求っていうよりも、コロナウイルスの結果もたらされる荒廃への下からの対応として現れてきている社会運動の課題と言った方が良いんじゃないかな。この課題は自分たち自身で、直接行動を通して行わないといけないものごとだよね。支配者たちに要求して、お願いしますと頭を下げるんじゃなくて。

アラニス:だいたい、いったいどんなクソ権力がじっさいにこの要求を受け入れてくれるっていうんだろうか? ほんの短い間であってもだよ。つまりさ、有給で病気休暇を取れるようにするとか、フードスタンプをもらえるようにするとかってのは、現実的な要求ではある。でも、それが上手くいったところで私たちが生き延びられるかどうかが官僚たち次第と言うのは変わらないし、むしろ国家の正当性を強化することになっちゃうよね。あ、「働かせるな」というのは――私たちが本当に求めてることだけど、これは資本主義と賃金制度を廃止するって意味にも取れるね。まあ政治家や企業が叶えてくれる望みじゃないけど。仮にそうしようと思ったって、彼らにはできっこないし。

クララ:それで、CrimethInc.の細胞が「5つの要求」に並んで「5つの行動」というポスターを作ったってわけですね。

私たちのバージョンはこういう風に呼びかけます:

1.すべての人に医療を
無料の検査、治療、医療ケアをすべての人に

2.働かないぞ
すべてのストライキとサボタージュ(訳注:労働争議の方法の一つ。職場には就くが、仕事の能率を下げて経営者に損をさせ、紛争解決を迫る)を支援しよう。すべての人がモノや資源にアクセスできるようにしよう。

3.支払い、家賃、借金の廃止
すべての家賃、住宅ローン、光熱費、借金/ローンの支払いをやめよう。すべての差し押さえと立ち退きを阻止しよう。

4.すべての囚人を解放しよう
獄中のすべての人を解放しよう。ICE(訳注:不法入国者の取締を行う機関)によるすべての行動を阻止しよう。野宿者のテントが破壊されるのを止めよう。

5.すべての人に住まいを
必要とする人たちのために空き家を開放しよう。

結論:これらは私たちが集合的に生き延びるための、必要火急の行動だ。財産を持っているか否かに関わらずすべての人が検査と治療を受けられるようになるまで、労働者が病気になっても家賃の支払いを強制されるなどということが無くなるまで、社会的な資源が警察や監獄ではなく、医療と住居に振り分けられようになるまで、私たちは皆危険にさらされているのだ。
当局が私たちの面倒を見てくれるまで待ってはいられない。私たち自身が、いま、実行し始めなければ。5つの行動を、ひとつ残らず。

アラニス:オッケー。これでいくつかの点で明らかに良くなった。とくに私たちが自ら直接行動にでるのが第一だというところが良いね。でも、基本的にはこういった基礎的な要求政治の変種にアナキスト的な彩りをのっけただけ。何度も言うけど、この内容に反対ってわけではないよ。それに、何のために私たちが手を取りあって立ち上がれるか、どういう行動が可能なのかといったことへの、人々の想像力を掻き立てる出発点としてとても役に立つと思う。でも、私が私たちに望んでいるのは、「要求」というやり方を、言葉の上だけじゃなく乗り越える力を集合的に身につけること。そして今私たちが自分たちの生を生きられなくなっている原因である権力に正当性を与えることなく、自分たちの生を取り戻す力を築き上げたいということなんだ。

家賃ストライキの組織化を支援するために、私たちがここで学ぶべきことは何でしょうか? 一つの見方はこうです:五つの要求、五つの行動、あるいは何でもよいですが、あなたが自分の置かれている状況で役に立つと思えば、それは使える「道具」だということです。しかし――この「しかし」が重要なのですが、これらの目標が、一緒に行動する人たちの本当のニーズや欲望に取って代わることが無いようにしてください。もしかしたら要求を受け入れてくれるかもしれないという機関にまたしても主導権を握らせ、力と正当性を与えるのはやめてください。私たちが主導権を、力を、正当性を彼らから取り返せるかどうかは、今このときにかかっているのです。共有された夢や欲望に基づいて、他者とつながろう。数か月前に当たり前に見えた常識に縛られないで。私たちはいまや全くの新世界にいます。これはごくごく最近まで信じられないほど頑丈に見えていた壁をぶち壊す、またとない機会なのです。だから、どういうやり方で組織するにしても、自分たちの想像力と可能性の地平を縛る道具ではなくて、拡大する道具を使ってください。

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