映画「遺書、公開。」
同じ映画を同じ日に2回観た。こんなことは久しぶりだった。
私はIMP.と言うグループが好きで、メンバーの松井奏くんが出演されるとのことでこの映画へ足を運んだ。
原作既読で展開は知っているし、何度も観る映画ではなさそうだなーなどと思っていて、いつその1回を観ようかなと考えていた。
舞台挨拶のライブビューイングのある夕方の回にしようか…と思っていたのだが、なぜか今日に限って家事がすいすい終わり時間ができた。
そしてもうこれも何かの縁!とりあえず観に行こう!と朝イチの回へ飛び込んだ。
鑑賞後余韻で映画館のロビーから動くことができなかった。
お、お、面白い!!!!!
なんだこれ?!
もう一回観たい!
と手が夕方の回を購入していた。
そんな「遺書、公開。」公開初日、偏見まみれの感想を垂れ流そうと思う。
あらすじ
本作は学園ミステリーでほぼ教室内で展開される。
また、24通の遺書を公開する作りのため場面に変わり映えがない。
しかし、息をのむ疾走感と、迫力とで120分が飽くことなくあっという間だった。
展開もどんどんと変わっていく中で、さすがは英監督。シリアスな中に時々小ボケが挟まれていて、ドキドキしたり、クスっとしたり、心臓と頭がとにかく忙しかった。
そしてミステリーというと視聴者側もリードされ謎を解いて真相に迫っていくものが多い。
しかし本作は、一人一人、一つ一つの遺書のエピソードにパワーがあり、のめり込んで夢中になって一息ついて考えようとする頃には、隙なく次に公開される遺書に答えを押し付けられる感覚が新しく面白かった。
舞台挨拶などで語られていた「全員が主人公」がなせる業なのだろう。
見ごたえが抜群である。
また、スクールカーストを題材にしながらも、従来はカースト下位がいじめを受けたり、そこから復讐をしたりなどと展開されるものが多い中、序列1位にフォーカスが当たる点も面白味を感じた。
様々な効果も面白く、水滴のしたたるぽちゃん…とした不安を煽る音の効果も面白かった。
水槽シーンは水族館で水槽を見ている籠り感が、窮屈さや閉鎖感を出していて面白かった。
最後のシーンの意味
問題が解決し、池永は廿日市に一緒に帰ろうと誘う。そして池永が「まだ隠していることはないか」と廿日市に問う。
廿日市は話し始めるが、それに載る廿日市のモノローグにぞっとする。
「池永はやっぱりお人良し。(姫山が)しゅうちゃんって言うのもなんか嫌だった。」と言うのだ。
人間観察が趣味の廿日市だから、池永自身もはっきりと自覚していない池永から廿日市への好意も把握しているのだろう。お人好しな池永がまんまと騙されている廿日市のサイコパスみにぞっとする。
あれだけ大々的に問題提起をしていたのに、結局好きな男のため?と面白くもあった。
そして、さんこいちでつるんでいた名取がいないのも意味があったのだろう。
なぜなら名取も人間観察が得意な人だからだ。
廿日市に対してまだ何かを思ってそうな視線を送っていた。
それが何か知りたくもあるので、もう一度確かめに行った方がよさそうだ。
誰の中にも2-Dがいる
姫山が命を絶った理由を探る中で、クラスは遺書の裏の意図を探ることに躍起になっている。そして徐々にあらわになっていく本性。
特にここは、赤崎理人役のIMP.松井奏さん、御門凛名役の髙石あかりさんの演技が圧巻だった。
いわゆる本性。時と場合によってはクズと表現されることもあるソレだが、私個人としてはこれをクズと表現していいのかとやや疑問に思った。
正直あまりクズと思えず、こんな気持ちあるよなと理解ができることも多々あったのだ。
隣にいる子が清らかであればあるほど自分が汚く思えてくること。
お互い利害一致しているのであれば、表面的に付き合っていけること。
そんなことに身に覚えがあるのだ。
私の中にも2ーDが確かに存在している。
でも同時にそれって駄目なことなのだろうかとも思うのだ。
問題が解決し数か月後の2ーDは合唱をしていた。みんな和やかに、笑いながら。何事もなかったように。
それを見て、あぁそうだよな。人間って、社会って良くも悪くもこうだよなと思う。
姫山は千蔭との会話の中で「全部好き、それはないかな。でもみんなのこと嫌いなところも含めて愛してる。」と話している。
姫山はクラスメイトの様々な裏の顔に気付きつつも丸ごと受け止めていたことがうかがえる。
そして姫山の言葉にあるように、社会はそんな愛と好きとの絶妙なバランスで成り立っているのだろうと感じた。
松井奏という役者
錚々たる若手実力派の役者さんが名を連ねる中、私の推しグループIMP.松井奏くんは初めての映画出演。
奏くんが演技をしているところはほとんど見たことがないので、どんなお芝居をするのかなと楽しみにしていた。
きっとたくさん苦悩しながらの挑戦だったと思うが、想像以上だった。
原作も読み込んだのだろう、序列2位の赤崎理人を違和感なく演じていた。
本性が出たあとの怪演がとてもよかった。
美しい顔が歪み、すらっと手足の長い美しい体躯が色っぽい。あの甘い声が放ったと思えない言葉たちがとてもいい。
クズと言う言葉がとても良く似合っていた。
パンフレットに書いてある自分の意見だというところもとてもよかった。
きっとこれからもっと経験を積んで素敵な役者さんになるのだろう。
松井奏という役者の今後が非常に楽しみになった。
カースト1位が自ら命を断つ、カースト1位にフォーカスが当たる点が面白いと先述したが、今の時代が作る映画だなと思う。
ぼんやりと発生するカーストから逃れられないような世の中だから考えたいこと。
上位だから下位だからいいのではなく、その人はその人の様々な思いがあることを知ること。
人をラベリングしてみる危険。
一人一人の無責任な言葉や振る舞いが、たとえ一つ一つは小さくとも、積もって人を苦しめることもあると知ること。
当事者意識を持てば見方が変わること。
そんなことを伝えているのではと感じた。
クスッとポイント
•黒瀬が姫山の机に手をつこうとして御門に「触るな」と怒鳴られてびびったところ
•千蔭が怒って三宅がとばっちりを受けたところ
•最後の合唱曲が「手紙/アンジェラアキ」だったところ(皮肉?)