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細く 薄く 軽やかな建築をつくるテクニック

 クリスマスも終わり、あと数日仕事を頑張れば仕事納めでしょうか?
 仕事や家事育児で、年末年始の方がバタバタ忙しい!という方もいるかと思います。
 まだまだ忙しい方も、そうでない方も、よい新年を迎えたいですね。

 今回は、先日の記事、「構造デザイン発表会」を視聴してふと思いついた話題です。

 意匠設計者からよく頂く、細く薄く軽い建築をつくりたい!という要望。「構造デザイン発表会」をみて、その要望をかなえるには、何パターンが方法があるなと思いました。


軽やかな建築をつくるには?

 細く薄く軽やかな建築をつくりたい!

 でも構造設計者は、地震に強い建物を設計するのが仕事。

 地震強い建物 → 柱や梁・壁が太く大きくなる

 相反する2つの条件。
 地震にも強く、軽やかな建築をつくることはできるのでしょうか?

 思いつく案をリストアップしてみると・・・

1. 建物全体を軽い材料でつくり、大きな地震力がかからないようにすると、小さな柱・梁でも耐震性能を確保できる
(テントのような膜構造など。地震力は建物荷重に比例)

2. 強い材料を使用すれば、構造部材を小さくできる
(例えば、同じ断面積で比べると強度の大きさは 木材<鋼材 なので、木よりも鉄骨の方が細い柱で設計できる)

3. 斜め材を使用すれば、細い部材で地震力に抵抗できる

などがあります。

 それでも、建物を軽くするにしても、強い材料や斜め材を使用するにしても、それぞれ限界があります。それだけでは、意匠設計者が求めるような細さにならない場合があります。
 そんな時はどうすればいいんでしょう?
 実は、もっと効果的な方法があります。

もっと効果的なテクニックとは?

 それは・・・
 見える部分だけ細く薄くして、
 見えない部分を大きくして地震に強くすること
 
ということです。
 なあーんだ、と思いましたか? 知っている人にとっては当たり前の基本テクニックです。

 たとえば、よくあるのが、薄くて大きい庇です。
 見える部分、先端は、すごく薄い。こんな薄さで、このような大きな庇ができるのだろうか?とびっくりします。
 でも、実は、見えない部分が大きな部材になって、出の長い庇を支えていたりします。

イメージ図 薄い庇

 または、タイトル画像のような建物は、見える部材は、ごく薄い床や柱です。
 この写真だけみると、建物全体が、細い部材でできてているのではないかと錯覚してしまいそうです。
 でも実は、見えない部分に、剛強なコンクリート壁があって、その部分が地震時に抵抗していると思われます。

イメージ図 見える部分は細い柱


(タイトル画像は、みんなのフォトギャラリーからお借りしました。谷口建築設計研究所 葛西臨海公園展望広場レストハウス 1995年竣工 の写真です。)

中大規模木造建築にも応用されている

 最近は、このテクニックは中大規模木造建築にも応用されています。
 今流行りの、というか、SDGsやCO2削減の社会的ニーズから増えている中大規模木造建築。しかし、実際は、木材は揺れやすい、柔らかい材料であって、鉄骨やコンクリートほど、地震に対して強くありません。建物全体を木造にするには費用や施工性、材料調達などの問題があります。
 でも、オーナーは木構造で環境に配慮していることをアピールしたいし、見える部分を木の温かく柔らかい表情にしたい。
 その解決策として、通りに面している、見える部分だけ木造にして、他の部分は鉄骨造やRC造にする、という事例をいくつか見ました。

イメージ図 木造+鉄骨造


 部屋の内部については、見えている天井の梁は木なのだけど、その内部に鉄骨やコンクリートが入っていて、ふつうの木梁より強くなっている、などの事例がありました。

イメージ図 ハイブリッド梁

 見えている部分は木なので、建物全体が木造なのかと錯覚!
 でも実は見えていない部分に鉄骨やRC造が使われている。

 というテクニックです。
 どうでしょうか? 一般の人からみたら、ちょっとずるいですか? だましていますか?
 構造技術者の立場からしたら、合理的な方法だと思います。

 ちょっと話はとびますが、ファッションの着やせテクニックとかに似てるかも、なんて思いました。
 ほかにも、遠近法を強調させたり、明暗を利用したり、いろいろな「錯覚」や「だまし」が建築デザインに使われているのかもしれません。

 また気づいたことがあれば記事にしていきます。

 ではでは、よい年末年始をお過ごしください。

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