歴史外交方面の話 ウクライナ戦争は手仕舞い準備中か?
ウクライナ戦争の背景と日本への影響
ウクライナ戦争はそれ自身の背景、展開と日本への影響を分けて考える必要がある。影響については日本の反原発陰謀を空中分解させ、ビジネスのライバル、ドイツに大打撃を与えた点で差し引きメリットが大きい。
ただしウクライナ戦争を歴史の観点からみればアメリカがスーパーパワーの腕力を発揮した一例。古くは南ベトナム、イラク、最近ではアフガニスタン侵攻と行動、イデオロギーがよく似ている。
2014年にビクトリア・ニューランド国務次官とジェフ・パイアット駐ウクライナ大使の電話がWikileaksに公開された。電話内容はヤヌコビッチ大問題を失脚させて親アメリカの大統領を立てるクーデーター計画だった。
スターリン、ソ連全土で富農一掃のホロドモール
スターリンの富農一掃のホロドモールでウクライナは激しい被害を受けたが当時のボリシェビキの幹部にはユダヤ人が多く、ウクライナにはもともと反ロシア感情があったがこれに加えて強い反ユダヤ感情が広まった。
このため第二次大戦でウクライナはナチス・ドイツの同盟国となり、義勇兵で武装親衛隊第14師団が編成されることとなった。このガリツェン師団は強制収容所の看守、対パルチザンなどでヨーロッパ全土で無数の戦争犯罪を起こしている。戦後もアゾフ連隊などの反ソ秘密結社はSSのシンボルマークを使っていた。
2014年にキエフでファックEUクーデター
2014年当時、ニューランド次官らが後継候補に上げたのはウクライナ政界の有力者だったが、ネオナチだという批判が出た。そこで弁が立ち知名度のあるユダヤ人を探し始めたという経緯がある。
ニューランド次官は電話で「ファックEU」と罵倒していたことが暴露されたが、この長期計画は成功しアメリカ人の血を流さずにロシアとドイツを叩くことに成功した。
余談だが当時wikileaksの暴露はジャーナリズムの自由の鑑と賞賛されていたのにアメリカの大手メディアはウクライナ戦争以後、この暴露だけでなくwikileaksそのものについても触れなくなったのは面白い。
中間選挙後の展開は?
これまでのアメリカ外交ではもっとも巧妙な傀儡政権づくりだったが、問題は数千億ドルにおよぶ戦費。
平均的アメリカ人の世界知識はゼロに近い。マンチェスターは国だと思っていたり、オーストラリアとオーストリアの区別が付かないレベルで、外交は票にならない(この点、日本とよく似ている)。しかし莫大な戦費はインフレを加速、連銀は公定歩合を引き上げざるをえない。
ウクライナ戦争はまずガソリンの高騰を招いたが、インフレは物価を上昇さえ、利上げは不動産の変動金利ローンに連動する。どちらも一般有権者のフトコロを直撃する。
マクロにみても利上げは資金を債権に向かわせる。中間選挙前にすでにベンチャーキャピタルには逆風となっており、シリコンバレーにはレイオフが吹き荒れていた。アメリカの強みを作ってきたハイテク起業にも不利となっている。
もともと中間選挙は政権党が負けるのが通例だが、大敗すれば残りの2年がレイムダック化するはず。ニューランド次官らは今年の夏あたりから手仕舞いを考え始めた形跡がある。
サムネール画像:Wikipedia M.Bitton - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116412043による
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